北極旅行
北極クルーズ
オーロラは、北極や南極域の遥か上空で発光する自然現象であり、その源は太陽にあります。太陽からは、「太陽風」と呼ばれるガスが放出されています。このガスはプラズマと呼ばれ、負または正の電気をもつ電子や陽子(水素イオン)などからなっています。太陽風が地球に到達すると、地球の磁場の影響を受けて地球磁気圏の内に取り込まれ、太陽と反対方向の夜側に蓄積されます。蓄積量が多くなると両極域へと運ばれてゆきます。運ばれる途中で加速されて高速になった電子は、「オーロラ電子」と呼ばれ、磁力線に巻き付きながら地球の超高層大気の上層(電離圏)に向かって飛び込んできます。このオーロラ電子は地球の大気に衝突し、100kmから500kmの高度で遮られてしまいます。
この際の衝突により、オーロラ電子が持っていた運動エネルギーが大気に乗り移ります。その結果、衝突を受けた大気中の酸素原子や窒素分子は、「励起※状態」と呼ばれるエネルギーが過剰な状態になってしまいます。励起状態は不安定な状態であるので、すぐに、元の安定なエネルギーの低い状態(基底状態)に戻ろうとします。戻る際に、過剰のエネルギーを光として放出します。この光がオーロラなのです。
オーロラがカーテンのような筋状に見えるのは、オーロラ電子が磁力線に沿って動き、その途中で大気と衝突して少しずつエネルギーを失い、大気を光らせるためです。オーロラとなって光るカーテンは、地球の磁力線が夜空に浮かび出たものといえます。
オーロラは、極地域でよく見られることから「極光」とも呼ばれます。北極地域で見られるオーロラを「北極光」、南極地域で見られるオーロラを「南極光」と区別して呼ぶこともあります。
※励起(れいき)とは
量子力学で、原子や分子が外からエネルギーを与えられ、もとのエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移ること。
オーロラの出現頻度が高い領域は「オーロラ帯」と呼ばれています。北半球はアラスカからカナダ、グリーンランド南端、アイスランド、そしてスカンジナビア半島の北端を通る地域です。その地に行けば、星空が見える天気の良い夜にはオーロラを見ることができる可能性が大きいです。南半球では昭和基地がオーロラ帯の真下に位置しています。
「オーロラ帯」とは、”オーロラが統計的に出現しやすい磁気緯度が65°から70°の地帯”、を意味します。一方、「オーロラオーバル」と呼ばれる領域もあり、それは、宇宙から地球を眺めたとき、” その瞬間瞬間にオーロラが現れている場所”、を意味しています。人工衛星から撮影したオーロラオーバルの写真をここに示しました。「オーロラオーバル」は「オーロラ帯」とは異なるものです。「オーロラオーバル」の形と位置は太陽風と地球磁気圏との相互作用により、時々刻々変化しています。
北半球と南半球の地図上にオーロラ帯の位置を示す。地磁気の極と主な観測点の位置も示した。このオーロラ帯の地域に行けば、オーロラ活動が活発な時には、低緯度まで広がり、幅も太くなります。一方、活動が弱いときには極方向に縮まり幅も狭くなります。極域の高緯度に行けば行くほどオーロラが良く見えると思われがちですが、オーロラオーバルは磁極を取りまくドーナツ状をした磁気緯度が60°~80°付近にあるために、オーロラオーバルよりも高緯度側では逆にオーロラが見える確率は低くなります。
オーロラの光の色は、主に、赤、緑、青、ピンク色です。一般的な特性として、カーテン状をしたオーロラの上層部は赤色であり、下層の部分では緑色になります。より激しいオーロラが出た場合には、カーテンの下の端が青やピンク色に輝きます。
オーロラの色は、オーロラ電子が衝突する大気と関係しています。オーロラ電子が地球の大気を構成する酸素と衝突した場合には赤や緑の色を発光し、窒素と衝突した場合には青やピンク色が発光します。さらに、衝突するオーロラ電子のエネルギーにも関係しています。そのエネルギーが低いと赤色に光ります。エネルギーが高くなるにつれ、緑、青、ピンク色となります。実際のオーロラは、様々なエネルギーの電子により、いろいろな高度で起こっていることから、その色合いは多種多様です。
様々な色をしたオーロラの例。緑色をしたオーロラが最も多く発生する。文責: 国立極地研究所・名誉教授 佐藤夏雄