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南極海生態系
南極海の生態系は主に、表層性の生態系と中深層性の生態系の二つが考えられています。これらの二つの内、中深層生態系は深い海の中のことで調査が進んでいないため、その実態は余り良く分かっていません。
表層生態系は数億トンのナンキョクオキアミとこれを捕食するペンギン類、ヒゲクジラ類、ナンキョクオットセイ、カニクイアザラシを中心とする主に水深0-200mの表層に形成される生態系です。
表層生態系を構成する動物のうちペンギンは、陸上で繁殖するためその生息状況を把握し易いため生態系の変動を示す指標種と考えられています。
この表層生態系は捕鯨など人間の活動の影響を強く受けてきました。最近は温暖化などの人間活動の影響も受けています。
近年、南極半島ではヒゲペンギンやアデリーペンギンの減少が報告されています。減少の原因として以下のシナリオが指摘されています。
『温暖化→海氷の減少→アイスアルジー(海氷付着性藻類)の減少→アイスアルジーを食べるオキアミの減少→オキアミを食べるペンギン(他の動物も含めて)の減少』というシナリオです。
中深層生態系はハダカイワシ類やイカ類とハクジラ類やミナミゾウアザラシを中心とする水深200-1,000mの中深層に形成される生態系です。しかし、イカが何を食べているかなど実態は予測の範囲です。
文責: 国立極地研究所・名誉教授 内藤靖彦
- 国立極地研究所・名誉教授内藤 靖彦
- 国立極地研究所名誉教授、南極観測隊に4回参加(越冬3回、夏隊1回)、越冬隊を2度務めた。その他、英国、オーストラリア隊にオブザーバーで参加。専門は海洋生態学(ペンギン、アザラシの行動の計測)で、バイオロギングサイエンスの分野の世界的パイオニア。