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クーバービル島(CUVERVILLE ISLAND)
クーバービル島は高く突き出すような地形をしたコケ類に覆われた岩肌を持つ小さな島です。グレアムランドの西沿岸にあるロンジェ島とアルツトウスキー半島の間にあるエレラ海峡に位置しています。1897~99年のジェルラシによるベルジカ探検隊により発見され、フランス海軍の副提督の名に因んで名付けられました。エレラ海峡はジェルラシ海峡とアンドボード湾をつなぐ景観たぐいまれな海峡です。ロンジェ島が西に浮かび南極半島を東に置く、クーバービル島はこの海峡の北部にあります。エレラ海峡の名前はベルジカ探検隊の出資者であったブリュッセル大学の教授レオ・エレラに由来しています。
上陸地点の南は少し高台になっていて、そこには、多くのゼンツーペンギンたちが営巣しています。浜辺はハンモックのように緩やかなカーブを描いた丸石の浜辺です。その昔、氷河の衰退とともに島が隆起し、また海面が下がったことがうかがわれる地形です。島の北東部は緩やかに傾斜した岩床が200m程広がり、ゼンツーペンギンたちの営巣地として長く利用されていることがグアノ(糞化石)や泥や有機物の堆積した様子からうかがえます。この岩床は「結氷淘汰」により小さく、平らで、角ばった岩が散乱しています。ペンギンたちにとっては使い勝手の良い場所となっています。
結氷淘汰(クリオタベーション)とは、凍り、溶け、壊され、分解されていく過程の中で堆積物などが粒径・形状・比重などに応じて選別・淘汰されていくことです。
島の北部にある丸石の浜の傾斜がある場所では、多くの植物相が見られます。また、高所には、ゼンツーペンギンが営巣しています。春にはまだ雪に覆われていますが、それでもペンギンたちは海との間を往復しながら畝(うね)のような通り道を作りだしていきます。島を船から見るとまるでその畝がスキーの轍のように見えます。地衣類やコケ類、草も雪が溶けるまでは、お目にかかることは出来ません。クーバービル島、ロンジェ島、そしてオーン諸島にまたがる海域には多くの氷山が押し寄せるため、その上で寛ぐアザラシたちを見る機会があるかも知れません。観光客の上陸制限によっては、クーバービル島とロンジェ島のジョージス・ポイント、そしてオーン諸島へと分散して上陸活動を行うこともあります。
ゼンツーペンギン、ミナミオオフルマカモメ、ミナミオオセグロカモメ、ナンキョクアジサシ、サヤハシチドリ、オオトウゾクカモメ類がここで営巣をしています。クーバービル島は、この辺りでゼンツーペンギンの一番の営巣地でもあります。1994年の調査では4,818番(つがい)以上の営巣が確認されました。キバナウたちは島の北東部に巣を作り、アシナガウミツバメは、島の高所に営巣しています。ユキドリやマダラフルマカモメたちも島の北東部で営巣していることがあります。ウェッデルアザラシやナンキョクオットセイも浜にあがってくることがあります。固着地衣類、コケ類、ダイダイゴケも露出した岩肌に見かけることが出来ます。ここには、ナンキョクコメススキが多く分布しています。上陸地点より上の部分にはクロヒゲゴケや地衣類、または多くのコケ類が分布しています。
島の北西部ではオオトウゾクカモメが営巣していて、非常にテリトリー意識が高く、近づきすぎると頭や肩を狙って攻撃をしてくるため、観光客は立ち入り禁止区域となっています。そのためヒナの姿を見ることは出来ません。もし、オオトウゾクカモメに襲われることがあれば、こぶしを突き上げ、頭より高い場所を作ることで、攻撃がこぶしのほうに一時的に移ります。その隙に安全に歩いてきた方向に後退するべきです。営巣していない若いオオトウゾクカモメたちも夏の終わりにはここで群れている様を見る事ができます。