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ベイリー・ヘッド(BAILY HEAD)
ベイリー・ヘッドには168メートルの高さまでおでこのように突き出したランチョ・ポイントと呼ばれる岸壁が目立つ場所にあり、デセプション島の南東部に位置しています。上陸することが非常に難しい場所で、それでも上陸を試みる者たちは早朝、海が穏やかでうねりが少ない時間を狙うことが多いです。上陸地点の黒砂の浜辺は島の東部へと向かって7.2kmにわたりブランスフィールド海峡に直接面しています。ベイリー・ヘッド海岸沿いには「ミシンの針」と呼ばれる凝灰岩の海食柱(Sea Stack:海によって岩盤が浸食され、急峻な斜面の柱のような形状の岩)が見られます。
砂浜に隣接して、この浜を形成している要因となっているデセプション島の氷帽(アイス・キャップ)の氷壁が立ちはだかります。一見、まるで黒砂の丘のように見えるこの氷壁は、内地から運ばれる火山灰が豊富に含まれています。
浜の砂や小石はすべて黒と赤の火砕岩です。11月初旬のころは、丘陵上は少し雪が薄くつもっているだけかもしれないが浜辺や谷への通路もすべて雪で覆われます。12月には雪も解け、“円形劇場”ではペンギンの糞化石(グアノ)のピンク色とあちこちに分布する緑のナンキョクカワノリが地上を彩ります。
もし上陸が無事にできたなら、ぜひその幸運と栄光をかみしめてほしいです。ここには何百羽ものヒゲペンギンたちがボーリングピンのように所狭しと立ち回り、動き、波間を縫うように泳いでいる様子がすぐ目の前で楽しめます。水から上がった彼らは水を振り払い、毛づくろいをして、そして内陸の長い道のりを自分の巣とパートナーのもとへ帰るため歩き始めます。ナンキョクオットセイには十分注意をして、けっして彼らと海の間に立つことがないようにしなければなりません。
ヒゲペンギンたちは上陸地点の浜辺から丘を登り谷あいへと進んだところに営巣しています。この営巣地を出来るだけ適切に表現しようとするのなら「ペンギンたちで満員の東京ドームコンサート」でしょう。流れのはやい雪解け水を運ぶ川がこの中を走ります。この川の流れが深く早くなっているところは横切ることがないように注意しないといけません。絶え間なくこの丘陵地をあがり登りする数百ものペンギンたちの景観は圧巻です。この円形劇場のような丘陵にぐるっと囲まれたエリア一面にヒゲペンギンたちが集まりせわしく活動しています。ペンギンたちに囲まれどこを見ればいいか集中することが難しいくらい、この場所は『特別』であると言えるでしょう。晴れの日であればメモリーを使いきるほど写真を撮ることが必至で、曇りの日であっても関係なくいい写真が撮れる場所であると言えるでしょう。ここで営巣しているのはヒゲペンギンとオオトウゾクカモメたちです。1989年の調査ではここに100万番(つがい)を超えるペンギンが確認されましたが、その後の1992~96年に行われた調査ではデセプション島全体においてヒゲペンギンは減少傾向にあると報告されました。ナンキョクオットセイは夏が深まるにつれ多くがこの浜辺にやってきます。ときには丘陵沿いに少し奥まったところまで入りこんでいくナンキョクオットセイも見られます。ウェッデルアザラシやミナミゾウアザラシ、カニクイアザラシも浜で見かけることがあります。時期と場所によって氷雪藻が見られることもあります。雪が解けた後はナンキョクカワノリが生い茂る様子も観察できます。彩り豊かな固着地衣類も丘陵上部の岩肌に生息しているコケ類を目にすることもあるかもしれません。
もし海や波の状態で上陸が不可能な場合には島の南側の方へゾディアック・ボート・クルーズを行うことが可能な場合もあります。ランチョ・ポイントから「ミシンの針」の間の岸壁沿いはゾディアック・ボートから見ているだけでもその力強さとたぐいまれな素晴らしさを十分に感じることができるでしょう。またヒゲペンギンたちが岸壁上にたむろして、ヒョウアザラシに気をつけながら海に入るタイミングを測る様子が常に見られます。ときとして狩りを成功させたヒョウアザラシを見ることができるかもしれません。