コモンウェルス湾
コモンウェルス湾のオーストラリア地区(およそ東経142°40’)にはデニソン岬史跡があります。これはダグラス・モーソン率いる1911~14年のオーストラリア・ニュージーランド隊の南極探検を記念したもので、モーソンは1914年にサーの位を授与されました。この南極探検はオーストラリア・イギリス両国政府、民間組織、そして個人による財政援助を受けて行われました。この時の個人支援者のひとり、シドニー在住のヒュー・デニソンが岬の名前となったのです。英国人であれば対岸の突端につけられた二つの名前 「ランズエンド」と「ジョン・オグローツ」 に心当たりがあるでしょう。この場所は南磁極に近く、モーソンの科学研究プログラムは主として地球上の磁場に関するものでした。
デニソン岬は短期間でも人間が住み着いた場所としては地球上で最も風の強い場所とされています。常に重力によって引き起こされるカタバ風(斜面降下風)が起こり、氷の斜面を滑り降り海岸に向かって吹きつけます。
夏場の平均風速は24ノット(時速57km)ですが、瞬間風速で130ノット(時速242㎞)を記録したことがあります。この強風の為、ゾディアック・ボートやヘリコプターでの上陸がしばしば不可能となります。大陸高地の青い氷は強い風の証拠で、小屋のある辺りが穏やかな時でも氷河の突端では雪が渦巻状に吹雪いている事などは珍しくありません。ここの見所のひとつに、沖合にあるマッケレー小島のキノコ状の雪があります。強い風に吹きつけられた海水の飛沫が陸地に凍りついたもので、18mにもなる高さでニョキニョキ生えているのです。
コモンウェルス湾史跡には本棟と作業棟、それに各種科学研究用の小さな小屋が建っています。訪問者はそれらの小屋に入ったり、周辺にある加工品や遺物(モーソン探険隊時代に遡るペンギンやアザラシの遺骸を含む)を乱したり持ち帰ったりしてはいけません。岬の周辺にはアデリーペンギンの集団営巣地が数多く見られ、他にもアシナガウミツバメやトウゾクカモメ、さらにウェッデルアザラシもしばしば見られます。
この場所一帯はオーストラリア政府南極局、オーストラリア遺産委員会が責任を持って管理を続けています。
(南極旅行&南極クルーズ2-24)