サウス・シェトランド諸島
サウス・シェトランド諸島は南極半島の北西に半島とほぼ平行するように、 500㎞くらいの海域に約20の島々が散らばっています。半島とは幅180㎞の深海、ブランスフィールド海峡で隔てられています。
サウス・シェトランド諸島は1819年に、ホーン岬を通過しようとしていたウィリアム・スミスの船が暴風に襲われて航路を外れたため偶然に発見したものです。
スミスは同年10月英国に帰り、この島々を「ニュー・サウス・シェトランド」としてイギリス領有権を主張しました。
1820年にはエドワード・ブランスフィールドが海図の作成と調査の為この地に派遣されました。サウス・シェトランド諸島は南極大陸に起源を発していて、デセプション島やペンギン島に見られるように活火山または最近まで活動していた火山がいくつかあります。
サウス・シェトランド諸島の北東の端には、他の島と少し離れた位置にエレファント島とそれに隣接したクラレンス島があります。エレファント(象)島と名付けられたのはゾウアザラシが多数生息していたからですが、この島はシャクルトンの部下たちが海氷に閉じ込められたエンデュランス号を諦めて脱出した後、救援を待った場所として知られています。隊員の大部分はここに残りましたが、シャクルトンは5名の部下と共にここから救援を求めてサウス・ジョージア島に向かったのです。
現在は彼らがいた形跡はどこにも残っていません。見張り岬(Cape Lookouトン)付近の海岸には多数のゾウアザラシやオットセイ、数種類のペンギンが生息していて訪問者の目を楽しませてくれます。
今日、サウス・シェトランド諸島で特筆すべき事は、ここに多くの南極観測基地が設けられている事で、特に1957年から58年の国際地球観測年にはその数が急増しました。特にキング・ジョージ島が人気の高い場所ですが、それは最も南米大陸に近く、気候が比較的温暖である事に加えて、南極大陸の領有権を主張する、または今後主張する事を考慮している国々が、主張現場で実績を積もうとしたからのようです。南米諸国の基地が多いこともその理由の一端を現しています。
キング・ジョージ島にある八つの基地のなかに大きなテニヤンテ・マーシュ基地(チリ)とそれに隣接してベリングスハウゼン基地(ロシア)があります。
チリの基地は本格的なもので基地内には学校、病院、銀行、郵便局が建てられ、お土産物店もあります。更にその近くにはチリの空軍基地と小さなホテルがあります。
ロシアの基地は経済的理由から現在は殆ど使用されていません。
さらに中国、韓国、アルゼンチン、ウルグアイの基地も近くにあります。ですから、ここは南極大陸で最も野生に満ち、かつ魅力的な場所とは言えません。
アドミラルティ湾にはフェラス基地(ブラジル)とアートフスキー基地(ポーランド)があり、ここの方が訪れる価値がある場所と言えます。アメリカはアートフスキー基地近くのコパカバーナと名付けられた海岸にピーター・J・レニーという夏基地を運営しています。
サウス・シェトランド諸島のいくつかの場所は特別保護区域になっていて一般訪問者の立ち入りは禁止されています。それでもまだ他に多くの見所があります。
アルゼンチンの小さな夏基地が置かれたハーフムーン島のヒゲペンギンのコロニーや、グリニッジ島のヤンキー・ハーバーの大きなゼンツーペンギンのコロニーは人気があります。
リビングストン島のハナ・ポイントには、ゾウアザラシの群れや、数種のペンギン、そして子育て中のオオフルマカモメなどの豊富な野生生物が見られます。
デセプション島とペンギン島の二つの火山島はどちらも必見の価値があります。
ペンギン島では火山性円錐丘を登ってスリル満点の景色が味わえるのと同時に、アデリーとヒゲペンギンの集団繁殖地やおびただしい数のミズナギドリを見る事が出来ます。馬蹄形をしたデセプション島の外側にあるベイリー・ヘッドにはヒゲペンギンの大きなコロニーがあります。ここはすばらしい場所なのですが、気象条件が悪い場合はしばしば上陸を妨げられる事があります。水神のふいごと呼ばれる狭い入り口を通って広大な陥没カルデラに入ると鯨湾(Whaler’s Bay) の大きな捕鯨基地跡や1969年の噴火で破壊されたチリ基地やイギリス基地の跡を見る事が出来ます。
振り子入江(Pendulum Cove)の黒砂海岸近くでは地熱に温められた海水が熱くなっている事でしょう。アルゼンチンとスペインの夏季観測基地もこのフォスター湾と名付けられた火山カルデラ内の対岸にあります。
(南極旅行&南極クルーズ2-12)