マッコウクジラ
マッコウクジラは歯クジラの中で最大のものです。雄の平均体長は15mで体重は36トンにもなります。雄よりかなり小さい雌でも平均体長が11m、体重が20トンになります。横から見ると巨大な四角い顔が全長の3分の1を占めており見間違えることはありません。下顎は長くて狭く頭全体の大きさに比べるとかなり小さく見えます。
背びれらしきものはありませんが、背中に一連のこぶがあって前にあるのが一番大きくなっています。体の表面の大部分がしわだらけの干し柿のような皮膚で覆われていて、まるで体が皮の中に縮んでしまったかのように見えます。
体色はほとんどが暗灰色か褐色です。
(伝説の白鯨の様な純白のものも見られたことがありますが極めて稀です)
他のクジラ目と違ってマッコウクジラの噴気孔は鼻の先端、真ん中より左寄りに位置しています。潮吹きは独特で、前方左側に向かって噴出します。マッコウクジラはその潮吹きで簡単に見分けられ、どの方角に泳いでゆくかも当てることができます。
胸鰭は短くずんぐりしていて、尾は極めて頑丈でやや四角い形をしています。
(このクジラは前触れもなく突然水中に潜ることが多いのですがその場合は尾を空中に振り上げます)
マッコウクジラはイカ(深海性の大型種を含む)を主食としますが、ガンギエイ、サメ、その他様々な種類の魚も獲物とします。よく巨大イカの触足でつけられた吸盤跡がついています。このクジラは潜水のチャンピオンで、知られているだけでも少なくとも3,000m以上潜ったことがあります。
一度の潜水時間は大体10分ほどですが、1時間以上潜り続けることも可能です。
雄は冬の熱帯の海から夏には南極の氷の先端部まで単独で長距離を回遊します。雌と子供は年間を通じて熱帯の近くに留まり、南極の海で見かけることはありません。
マッコウクジラは商業捕鯨の全盛期には主にアメリカのニューイングランド沿岸の港やサンフランシスコ港を基地とする捕鯨船団によって大量に捕獲されました。
一時はマッコウクジラの漁獲量が全漁獲量の40%を占めたこともあります。
マッコウクジラ漁が尊重された理由はその油と、クジラの額からとれる水性の蝋(ワックス)である鯨蝋にありました。鯨蝋は化粧品、軟膏、ロウソクの原料として利用されたのです。現在でも北半球の沿岸地帯の基地から少数のマッコウクジラ漁が行われています。
(南極旅行&南極クルーズ6-57)