歯対髭
クジラは基本的に歯があるものと無いものとの二つの種類に分けられます。歯のある歯クジラにはイルカ、シャチ(実際は大型のイルカ)およびマッコウクジラが含まれています。歯の無いヒゲクジラは上顎から窓のブラインドのように吊り下がっている板状のクジラひげでプランクトンを 濾過して摂取します。
歯クジラはイカ、魚、鳥、アザラシ、他のクジラなど比較的大きな餌を狙って活発に活動します。歯クジラは発達した非常に便利なソナー(反響位置追跡装置)を備え、それによって深海の暗い水中でも餌の場所を探り当て捕まえることができるのです。クジラが発する超音波パルスは人間の耳には聞こえませんが、仲間同士のコミュニケーションでは、コロコロ、チッチ、ピーピー、ブーブーなど人間が簡単に聞き取れる音を用いています。
歯の無いクジラは歯クジラとは全く違った方法で捕食します。前に述べたようにヒゲクジラは上顎から垂直にぶら下がった角質のクジラひげの板を持っています。
それぞれのひげ板の内縁(うちべり)には、密生した繊毛がほつれた感じで生えていて非常に効率のよいふるいとなります。クジラは水中を動くときにその巨大な顎を開き(殆どの種はより効率よく餌を飲み込み濾過するため伸縮する喉をもっている)大量の海水を大きな口に含みます。そして海水はひげ板の間から押し出されて、濾過されたオキアミや小魚など、どんな小さな獲物でも逃さずに飲み込むことができます。
こうしたプロセスによってヒゲクジラは色々な微生物だけでなく大量のオキアミを得ることができるわけです。ヒゲクジラは、種類ごとに濾過板の大きさも異なり、様々に違った餌を食べる事によってお互いの共存も図られるのです。
ヒゲクジラは一般的に比較的浅い海で採食します。餌の大半を占める動物プランクトンが植物プランクトンに依存していて、この植物プランクトンがさらに日光に依存しているからです。従ってヒゲクジラは通常ある種の歯クジラのように深く潜ることはなく、90m以上潜水することは殆どありません。
南極のヒゲクジラは特有の回遊サイクルを持っていて、冬は低緯度の暖かい海域で交尾と出産をし、夏は冷たい南極の海で採食します。子供のヒゲクジラ、特に大型種は夏に餌場に辿り着くまでに離乳できるように急速に成長しなければなりません。
(南極旅行&南極クルーズ6-46)