ウェッデルアザラシ
このアザラシは地球上で最も南に生息するアザラシで(事実、最南端に生息する哺乳動物でもあります)南緯78°の海域でも繁殖しています。年中陸地から見える範囲内にいます。しばしば遠くまで出かける事があり、サウス・ジョージア島、サウス・オークニー諸島、フォークランド諸島をはじめ、南オーストラリアやニュージーランドでも見かけられる事があるます。ジェームズ・ウェッデル船長が1823年に南極探険をした際、その際6頭の標本を採集したことから初めてこの種のアザラシが知られるようになりました。
雌雄は殆ど同じ大きさですが、実際は雌が雄よりやや大きくなります。雄は呼吸用の氷穴を中心に水中に縄張りを設け、そこに出入りする雌と水中で交尾しますが、ハーレムを形成することはありません。
ウェッデルアザラシはずんぐりした体型をしていて体重は約400kgにもなり体長は約3mほどです。体色は背中の部分が暗い灰色で、腹部は次第に淡くなる灰色、全身が明るい色の斑点と縞模様で覆われています。顔は小さいのですが、目は氷の下の深く暗い水中でもよく見えるよう極端に大きくなっています。主食は大半が魚ですがイカやオキアミも大量に食べます。好物は約70kgにもなる大型のミナミタラです。
繁殖期は雌が9月の始めに定着氷に到着し、1日か2日で出産を終えた直後に始まります。この時期、雄は接近してくる他の雄を追い散らし、雌は全力で子供を守ります。
子供は誕生後6~8週間位で体重が4倍の120kg以上になった頃離乳します。
この時期、雌の体重は136kgまでに減っています。子供は生れるとすぐに水に入りますが、何頭かは割れた海氷に押し潰されて死んでしまいます。
誕生後最初の2ヶ月間の死亡率は50%にもなると推定されています。
ウェッデルアザラシはおおむね年間を通じて陸の近くに留まっています。
冬の間は定着氷に開けられた穴から海に出入りし、呼吸と餌を得ています。
下顎の門歯と犬歯を氷の下側にあてがい、上顎の門歯と犬歯を弓型に回転させ氷に穴をあけるのです。その為年老いたウェッデルアザラシの歯はたいていひどく磨り減っていて重大な死亡原因になることがあります。
ウェッデルアザラシは潜水が巧みで、600m近くも潜り、1時間以上も水中に潜ったままでいられます。定着氷の環境では天敵の遭遇する事も殆どないので、人間と出会ってもさほど警戒することなくのんびりと寝そべっているのが見られます。
(南極旅行&南極クルーズ6-41)