断熱効果の皮下脂肪
南極で見られる哺乳類は全て、もちろん人間は除き、水生生物です。クジラ目の動物(クジラやイルカ)は豊富な油分を持つ皮膚の下の脂肪、つまり皮下脂肪で熱が逃げ出すのを防いでいます。
他の哺乳類のような毛も生えていないので毛で断熱するわけにもいきません。
脂肪は優れた断熱材であるばかりでなく食物が足りなくなった時に生存するためのエネルギーを蓄積するという二重の用途があります。
しかし一般に常温動物は周囲の温度が低い時は、より多くの食物を必要とします。
冬場は夏場より約50%も多くの食物を必要としますが、この時期はますます食物の確保が難しくなる時期にあたります。従って南極が冬の時はクジラ目の動物はたいていのアザラシや海鳥と同様に、より緯度が低く温暖な天候の場所に回遊します。
(しかしペンギンやある種のアザラシは一年中南極海域に留まっています。夏を過す海岸地域から冬場に海氷の端へ移動するだけなのです。ウェッデルアザラシは冬でも沿岸海域に留まります。定着氷の潮位差による氷の割れ目を利用した穴を呼吸用と餌の確保の為に維持します。)
南極のアザラシやオットセイ(分類学上鰭脚類と呼ばれる)はクジラ目の動物のように断熱のための厚い脂肪層を持っていますが、一部は、寒さから身を守るためにさらに毛皮を備えています。なんと体重の50%が皮と脂肪というアザラシもいるほどです。実際にアザラシは非常に効率よく熱の発散をくい止めるため、数時間氷の上の同じ場所にいた後でもその氷は殆どあるいは目に見えるほど融けたりすることはなく、また死んで何時間もたった後でも高い体温を保っているのです。
(南極旅行&南極クルーズ6-12)