第6章 生物的環境(ワイルドライフ)
一方、南極大陸は未だ氷河時代のままなのだ
南極大陸は極寒の地で、乾燥していて、強風の吹きすさぶ大陸です。この3つが南極での生存を難しくする最大の要因なのです。厳しい気候が生物を凍らせ、乾燥させ、吹きとばしてしまいます。こういった条件では肥沃な土壌はできません。
一般に岩が割れて、砂利、砂、粘土、沈泥が鉱物質の土の中にバクテリアや藻類の植物相が発生します。地球上の他の地域ではその後、次の次元の植物が土壌でコロニーを生成し、化学分解によってさらに上級の植物の生育に必要な多数の鉱物質を放出します。この鉱物質は土が極端に酸性やアルカリ性に偏るのを防ぎ、腐植質を蓄積します。これが複雑な維管束植物に適合し栄養のある基質となる有機質あるいは腐葉土をつくりだします。しかし南極ではこの熟成プロセスが様々な妨害を受けるのです。
あらゆる場所で絶え間なく起こる氷結と融解により岩が粉砕され、年中吹き荒れる風で浸食が進みます。このため原始植物がコロニーを形成するよりも早い速度で岩屑となってしまうのです。
原始土壌 (Primitive Soils)
低温、氷結作用、風、融解氷の表面流がまだ完全に腐食していない土の安定を難しくしています。このことによってほとんどの土壌が腐食していない栄養失調の状態になり、植物や動物が群れをなして成育するのに適さなくなります。
多くの内陸の山には実質的に無菌の鉱物土壌がありますし、乾燥した海岸地域では少量の最も単純な形の微生物しか砂や砂利に含まれていないこともあります。
サウス・ビクトリア・ランドのいわゆるドライ・バレーは腐植していない土壌で完全な不毛地帯に見えます。NASAが火星の土との類似性を研究したほどです。
米国の無人火星探査機「バイキング」のテストがドライ・バレーで行われました。
南極半島地域と積雪量の多い数箇所の海岸では肥沃な土壌のある所もあります。
ここでは充分な降水量が土中の有害な鉱物質を洗い流し、夏には植物が枯れないようにする地下の水溜りをつくります。これらの地域では藻類、地衣類、コケが育ちますが、ここでも本当の腐食有機土はつくられません。
しかし所によっては非常に養分のある「鳥起源」土壌(たいていはペンギン等のコロニーで産み出される糞化石によって形成される)が見られます。
(南極旅行&南極クルーズ6-1)