探検の英雄時代と大陸進出

探検の英雄時代と大陸進出
（THE HEROIC AGE OF EXPLORATION AND CONTINENTAL PENETRATION）

 

1895年7月、第6回国際地理会議の参加者は、南極地域へのさらなる探索を呼びかけました。ベルギー、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、スコットランド、ノルウェー、オーストラリア、そして日本からの科学者や探検家は、すぐにその呼びかけに耳を傾け、ほとんどの探検が科学調査を行うことを計画した遠征が着手される結果となりました。　南極での活動の理由は、利益から科学へとシフトし始めました。（国家の誇りの公正な尺度が投入された）。

 

1897年8月16日、ベルギー海軍将校のエイドリアン・デ・ジェルラッシが改装された捕鯨船ベルジカ号でアントワープを出航しました。多国籍な乗組員の中には、ロアール・アムンセンやフレデリック・クック、ヘンリク・アルツトウスキーがいました。ベルジカ南極探検隊は、1898年1月に南極半島に到着しました。グレアムランドの険しい海岸と西にある長い島々の間を航行し、流氷がちりばめられた水路は、彼を称えてゲルラシュ海峡と名付けられました。命名後、20回ほど別々の上陸を行いいくつかの島を海図化し、探検隊は1898年2月15日に南極圏を越えました。そしてその月の終わりに、ベリングスハウゼン海の氷に閉じ込められてしまいました。彼らは、船を氷の中から解放するために長く厳しい冬を越すことを余儀なくされました。1899年3月、1年以上氷の中で過ごした後、船は氷から解放され、彼らの発見のニュースと共にベルギーに戻りました。

 

 

その間にカルステン・ボルクグレヴィンク指揮の下、1898～1900年のイギリス南極探検隊の成功で、広大な南極内部への人類進出が始まりました（イギリス南極探検隊は、実際にイギリス人は3人だけでしたが、イギリスの裕福な出版社のジョージ・ニューンズ氏が支援したためその名が付けられました）。ボルクグレヴィンクは、9人の男の仲間と75匹の犬と共にアデア岬に設営したキャンプで冬を過ごしました。またボルクグレヴィンクと2人の仲間は、ロス棚氷を登りそりで南緯78度50分まで到達し、それは当時最南端の到達記録となりました。探検隊の動物学者であるハンソンが亡くなり、彼は南極本土に埋葬された最初の人物となりました。

 

1901年、イギリス海軍の将校であるロバート・ファルコン・スコットは、ディスカバリー遠征をヴィクトリア・ランドに導きました。探検船ディスカバリー号は、高緯度での科学的探査のために特別に建造されたイギリス最初の船でした。

 

 

ディスカバリー号の探検隊は、マクマード・サウンドのロス島の南端に小屋を建て、越冬をしました。そしてスコットと仲間のエドワード・ウィルソンとアーネスト・シャクルトンの2人は、犬ぞりを引いて南へトレッキングをし、彼らは南緯82度まで達し引き返しました。

 

 

同じ年にオットー・ノルデンシェルドが、スウェーデン探検隊を率いてウェッデル海へ行きました。しかし彼の船、アンタークティック号は、氷によって破壊され沈んでしまいました。一連の冒険と並外れた困難の後、3つの異なる場所で動けなくなっていた少数グループも含み全てのグループが2年以上たった1903年11月に救出されました。

 

1903年、フランスの遠征隊がジャン=バティスト・シャルコーの下で続きました。彼は、1904年の南半球の冬に向け、グレアムランドの西側の南緯65度近くのブース島の海岸の湾に落ち着きました。　しかし船が、沈んでいる岩にぶつかり、探検は中断されました。シャルコーは、1908年にプルクワ・パ？号で、再びグレアムランドへ戻り海岸と全ての沖合の島々の海図を作る仕事をしました。彼は全体で2,010km以上の海岸線と新しい領域を調査しました。またシャルコーは「極地の紳士」として知られ、とても人道的な男でクジラの乱獲の危険性を最初に指摘した人物の1人でもありました。

 

アーネスト・シャクルトンのニムロド遠征隊は、地理上の南極点到達を主な目標として1908年元旦にニュージーランドを出発しました。シャクルトンは5人の仲間と共に、南極では2番目に高い火山であるエレバス山への初登頂にも成功しました。1909年1月9日、シャクルトンは、当時としては最南端となる南緯88度23分にまで達し、南極点からわずか159kmの地点で折り返しました。

 

南極点への決定的の挑戦は、1911年1月にロアール・アムンセンの船フラム号がクジラ湾に到着し、ロバート・スコットがいるテラノバ遠征隊がロス島のエヴァンス岬に到着したことが始まりでした。どちらも充実したキャンプを設営し越冬の準備に着きました。10月20日、アムンセンは、他の4名と南極点到達に向けて犬ぞりチームを作りました。11月11日、見つけた山脈にクイーンモード山脈と名付けました。そして彼は12月8日にシャクルトンの最南端到達地点を越え、アムンセンと彼のチームは、1911年12月14日に地理的南極点到達を成し遂げました。

 

 

 

アムンセンの最優先の目標が南極点到達だったことに対し、スコットは科学的研究も計画に入っていました。彼はドライバレーとコエッツリッツ氷河の探索に西部隊を送り込んでいました。1911年2月には、北部隊をアデア岬に配置し、ボルクグレヴィンクの2つの小屋を修理させ独自に3つ目の越冬小屋を建てさせました。彼らは冬を過ごし、ヴィクトリア・ランド海岸を調査しました。

 

 

エドワード・ウィルソンとバーディ・バウアーズ、アプスリー・チェリー・ガラードは、エヴァンス岬からクロジエ岬まで冬季の陸路を旅し、コウテイペンギンの卵を収集しました。それは「世界で最悪の旅」と永遠に語られる旅となりました。男たちは－50℃以下、時には－61℃となる気温に耐え、執拗に襲い掛かる凶暴な嵐と戦い、生きて卵をエヴァンス岬に持ち帰りました。

 

1911年11月1日、ロバート・スコットがいる部隊は、南極点を目指し出発しました。進行は遅く難しいものした。1912年1月9日にシャクルトンの最南端地点に到達し、1月17日ついに南極点に到達しましたが、アムンセンのテントとノルウェー国旗がそこで待っているのを見つけるだけで、その光景は彼らの士気を打ちのめすことになりました。そして食料不足と嵐によって数回テントに留められ、5人の南極点到達メンバーは全員帰途に死亡してしまいました。

 

ダグラス・モーソンと彼独自の遠征隊は、1912年1月にスコットが南極点に到達した頃、コモンウェルス湾のデニソン岬に上陸しました。彼はデニソン岬の岩のある場所でキャンプを設営しました。この時彼は、地球で最も風の強い場所を選んでしまったことに気づきましたが、それに気づいた時は遅すぎました。デニソン岬のキャンプ設営中、船は8人の西部隊を配置しにシャクルトン棚氷へ出航し、そこで別のキャンプが設営されました。翌年、西部隊は広い地域のクイーンメリー・ランドを地図化し、新しいペンギンの営巣地を発見しました。

 

 

 

コモンウェルス湾のモーソンのグループは、ジョージ5世ランドの区域を調査・地図化し、南磁極到達までを計画しました。ある日のそり旅行でモーソンは、仲間の２人を失いました。（1人はクレバスに転落、1人はビタミンA中毒）。そしてある日、モーソンもクレバスへ落ちてしまいましたが、幸運にも自力で脱出に成功する事ができました。

 

探検隊員達を乗せて帰る予定の「オーロラ号」は、1月15日にコモンウェルス湾のデニソン岬に到着する予定であった。しかし彼は、その日までにデニソン岬に戻れなく、モーソンの帰りを待っていた数人の仲間の隊員達と2回目の越冬を強いられました。1913年12月24日彼らはようやく救出されました。

 

モーソンの探険は、いくつかの最初の点で注目に値します。　彼は、無軌道の雪の上に最初のフラグの付いた道路を確立しました。 また初めて南極で隕石を発見しました。最も注目すべき点は、モーソンは南極大陸へ最初に飛行機を持って行き、無線通信を初めて使ったことです（飛行機は飛ぶことはしませんでした）。1913年2月デニソン岬とマッコーリー島の間で双方向の無線通信を確立させました。そして飛行機とラジオは、すぐに南極探検の方法を変えることになりました。

 

英雄時代の最後の主要な冒険は、1914年アーネスト・シャクルトンのエンデュアランス探検隊でした。シャクルトンは、南極点に到達する最初の男になるための彼自身の試みに失敗しました、しかし、彼は南極を横断する遠征をリードする最初の男になることを試みることで別の目標をたてました。彼の計画は、ウェッデル海からロス海までの大陸を横断する事でした。しかし彼の船エンデュアランス号は、ウェッデル海の氷に閉じ込められ、冬の間漂流してしまいました。最終的にエンデュアランス号は氷によって押し潰され1915年11月21日に沈んでしまいました。

 

 

南極の歴史の中でも最も信じられないサバイバル物語が続き、シャクルトンは仲間を率いて、氷上で救命艇を引きずったり、救命艇を漕いだりしてエレファント島へ導きました。そこからシャクルトンと5人の仲間は、最大の救命ボートであった6ｍのジェームズ・ケアード号に乗り、世界で最も荒れ狂う海を約1,300km横断し、過酷な15日間の後、サウスジョージア島の南岸に到着しました。  荒波が上陸を2日間遅らせました。そしてシャクルトンと2人の隊員は、サウスジョージア島の山岳地帯を食料も水も避難所もない中で36時間かけて横断し、捕鯨基地のあるストロムネス湾に辿り着きました。

 

 

一方、エレファント島で足止めとなった22人の男たちは、ひっくり返したボートを避難所として使い生き延びていました。食料は乏しく、時には煮詰めたアザラシの骨や海藻を食べていました。何回か救出を試みて失敗した後、最後にシャクルトンは、サウスジョージア島に到着してから105日後にチリのトロール漁船「イエルコ号」でエレファント島に残っていた隊員を救出するために戻ってきました。

 

またシャクルトンは、横断チームのために補給所を設置するロス海支隊をロス海に配置していました。彼らの船は吹雪の中で吹き飛ばされ、彼らも立ち往生し、ロバート・スコットが残していた物資でエヴァンス岬とハット・ポイントでの越冬を余儀なくされました。ハット・ポイントに取り残された男たちは特に悪く（横断チームのための補給所を設置した後に）、1人は壊血病、他の2人は吹雪で亡くなっていました。生き残っていた男たちは1917年1月にようやく救出されました。

カルステン・ボルクグレヴィンクが初めてアデア岬に足を踏み入れてから27年間、南極大陸は、８か国17の遠征隊を見てきました。

 

（南極旅行／ポセイドン南極読本6-7)