ミナミセミクジラ
ミナミセミクジラ(Southern Right Whale)
ミナミセミクジラは、交尾した後、安全なニュージーランドの港の近くで子育てをすることで知られ、ニュージーランドと最も密接に関わるヒゲクジラです。他の種のヒゲクジラは、通常、さらに遠い南極の餌場と暖かい海域の繁殖地の間を行き来します
ミナミセミクジラは、かつてケルマデック諸島、ニュージーランドの海岸沿い、そして亜南極のオークランド諸島とキャンベル島までの海域に生息していました。しかし現在では、本土の周りではめったに見られません。
ニュージーランドの南、500km~700kmの暴風が吹きつけるオークランド諸島とキャンベル島は、ミナミセミクジラの拠点になっており、毎年冬になるとミナミセミクジラが繁殖しにやってきます。第二次世界大戦以来、キャンベル島に沿岸監視員が駐留していたとき、少数のセミクジラの目撃報告がありました。オークランド諸島にはクジラが多く生息しており、1980年代初頭にはヨットマンが少なくとも75頭を発見し、多くの個体が生息している可能性への初めての手がかりとなりました。
クジラが10月から5月にどこへ行くかは謎に包まれています。彼らは、餌が少なくなる冬の間、南洋で最も豊かな餌場に向かうと考えられています。
ミナミセミクジラは、幅の広い尾びれを持った、体長15〜18mの大きな、ずんぐりした、黒いクジラです。背びれがないため他のクジラと識別がしやすい種としても知られています。
アーチ型の上顎は、クジラシラミの寄生によってしばしば白くなっている皮膚硬結の外皮で覆われています。また、呼吸の際、水が2列で吹き出し、高さ5mのV型のユニークな潮を噴き上げます。
セミクジラは、すべてのヒゲクジラの中で最も脆弱です。彼らは泳ぐのが遅く、その速さは毎時9km以下です。このため捕獲するのは簡単でした。また彼らは他の種よりも大量の油が体内に蓄えられているため、銛を撃ち込まれたとき、彼らは沈むのではなく浮かんでくるのです。そして、彼らの骨は、細く柔軟性があり、コルセットや傘の骨、乗馬むちなどの道具に使用され、貴重なものでした。これらの理由から、初期の捕鯨船は種を「ライトホエール」と表現しました。ミナミセミクジラを含むクジラ達は、狩猟によりその数を減らしました。その中でもシロナガスクジラが、一番大幅な個体数減少に苦しみました。
捕鯨前はニュージーランド全域のミナミセミクジラは1万頭と推定されていました。しかし、2000年代には、約250頭(主にオークランド諸島とキャンベル諸島周辺)に減少しました。しかし、ニュージーランド本土周辺での、1990年代後半以降に行われた少数の目撃情報から、およそ30頭未満の個体が生息していると考えられています。1935年以降に保護活動が始まりましたが、メスは3年ごとにしか子を産めないので、ミナミセミクジラの個体数はいまだに戻っていません。
(南極旅行/ロス海・亜南極9-5-3)