ナンキョクオットセイ
ナンキョクオットセイ(Antarctic fur Seal)
雄のナンキョクオットセイは雌よりはるかに大きくなりますが、これもまたアシカ科の典型です。雄の体重は180kgにもなり背中はオリーブグレイから銀色で、腹は褐色で真ん中に丸い切り替えがあります。毛は濡れると黒い色になります。首と肩にある粗毛は厚いたてがみとなっており、雄は年をとると頭部に鳥冠が生えます。雌は50kgくらいで、たてがみも鳥冠もなく、胸や喉は雄より薄いクリーム色をしています。オットセイは安全な浜辺の近くの岩場の海岸線を好みます。雄は9月から10月に浜辺にやってきて即座に縄張りを設けます。雄は戦闘的で、他の雄から自分の縄張りを維持・防衛するために度々雄同士で争いを続けます。雌は11月の終わり頃から浜に現れ、普通その後2~4日で子供を産みます。交尾は産後1週間後に行われます。
普通、数十頭の雌が一頭の雄によってハーレム状態の中で囲われています。1月の半ばにハーレムは解体を始め、繁殖や闘争で疲れきった雄は餌を得るため短期間海に出て行きます。1月の終わりから3月の始めにかけては換毛期になります。雌と子どもたちは4月に浜を離れますが、若い雄の中には6月末まで海岸に残るものもいます。
ナンキョクオットセイは50mほど潜って主にオキアミを食べていますが、魚、イカ、それにペンギンまでをも捕食する事も多々あります。冬の間は暖かい水域に移動し、個体分布は北のニュージーランド南島にまで及んでいます。
オットセイの繁殖集団が1820年代初めにサウスシェトランド諸島で発見されてから瞬く間に、年間何十万頭の毛皮を取るオットセイ猟船がアメリカ、イギリスから押しかけるようになりました。この海域のオットセイは乱獲のためにほとんど絶滅しかけ、猟師たちは更に別の個体群を求めて遠くに船を進める必要があり、このことが新たな島々や南極大陸の発見につながったのです。サウスジョージア島のオットセイも絶滅したものと見られていましたが、1933年にサウスジョージア島北西端の沖合にあるバード島で少数の集団が生き残っているのが見つかりました。この小さな群れの発見を元に、その後の保護政策も寄与して、個体数は飛躍的に増加し、サウスオークニー諸島、サウスサンドイッチ諸島、サウスシェトランド諸島といった他の場所でも再び繁殖が始まり、今日サウスジョージア島には推定300万頭以上のオットセイが生息しており、逆にこの爆発的に増加した個体数を制限する必要性の議論がなされる様になりました。
(南極旅行&南極クルーズ6-8-1)