南極のクジラ
南極のクジラ(Antarctic Whales)
クジラ目(このグループは、クジラ、マイルカ、ネズミイルカの全てを含みます) は肺呼吸をする哺乳動物ですが、もっぱら水中で生活する能力を完成させました。もう一つの海生哺乳動物のアザラシと異なり、決して陸に上がったり氷の上にあがったりすることはありません。
後脚は完全に退化して、効率よく推進する尾ひれが発達しました。前足は胸びれに変化し、鼻孔は頭の上に移動し、毛皮は失われてしまいました。冷水海での体温保持のために油性に富んだ厚い皮下脂肪の断熱材を備えています。脂肪は水よりも軽いので、浮力を増しています。その上、定期移動や絶食時の備蓄栄養の働きもします。基本的には水中で無重力となるため、クジラは何の制限を受けることもなく次第に巨大化してきたのです。クジラは潜る前に息を吸います(アザラシは吐く)が、潜水すると激しい水圧で、肺の中にある空気は圧縮されて気管支、鼻道といった気管系の軟骨性供給管へと送り込まれます。クジラは他の大抵の哺乳動物に比較して大きな肺を備えていて、一回の呼吸で肺の中の空気の85%をガス交換できます。(人間は普通の呼吸で15%~20%)大型クジラの殆どが水面で息を吐くとき、眼に見える蒸気のような「噴気」をします。この噴気は主として排気する際に、急激に吐き出された体内からの湿った空気が冷たい外気に触れて凝固したものです。
歯対髭(Teeth Versus Baleen)
クジラは基本的に歯があるものと無いものとの二つの種類に分けられます。歯のある歯クジラにはイルカ、シャチ(実際は大型のイルカ)およびマッコウクジラが含まれています。歯の無いクジラは、ヒゲクジラと呼ばれ、上顎から窓のブラインドのように吊り下がっている板状のクジラひげでプランクトンを濾過して摂取します。
歯クジラはイカ、魚、鳥、アザラシ、他のクジラなど比較的大きな餌を狙って活発に活動します。歯クジラは発達した非常に便利なソナー(音響定位)を備え、それによって深海の暗い水中でも餌の場所を探り当て捕まえることができるのです。クジラが発する超音波パルス波動は人間の耳には聞こえませんが、仲間同士のコミュニケーションでは、コロコロ、チッチ、ピーピー、ブーブーなど人間が簡単に聞き取れる音を用いています。
歯の無いクジラは歯クジラとは全く違った方法で捕食します。ヒゲクジラは上顎から垂直にぶら下がった角質のクジラひげの板を持っています。それぞれのひげ板の内縁(うちべり)には、密生した繊毛がほつれた感じで生えていて非常に効率のよいふるいとなります。クジラは水中を動くときにその巨大な顎を開き(殆どの種は、より効率よく餌を飲み込み濾過するため伸縮する喉をもっている)大量の海水を大きな口に含みます。そして海水はひげ板の間から押し出されて、濾過されたオキアミや小魚など、どんな小さな獲物でも逃さずに飲み込むことができます。こうしたプロセスによってヒゲクジラは色々な微生物だけでなく大量のオキアミを得ることができるわけです。ヒゲクジラは、種類ごとに濾過板の大きさも異なり、様々に違った餌を食べる事によってお互いの共存も図られるのです。
ヒゲクジラは一般的に比較的浅い海で採食します。餌の大半を占める動物プランクトンが植物プランクトンに依存していて、この植物プランクトンがさらに日光に依存しているからです。従ってヒゲクジラは通常ある種の歯クジラのように深く潜ることはなく、90m以上潜水することは殆どありません。南極のヒゲクジラは特有の回遊サイクルを持っていて、冬は低緯度の暖かい海域で交尾と出産をし、夏は冷たい南極の海で採食します。子供のヒゲクジラ、特に大型種は夏に餌場に辿り着くまでに離乳できるように急速に成長しなければなりません。
爆発的成長率(Massive Growth Rate)
クジラ目の母乳は、乳脂肪率が高く、濃いので海の水とは簡単に混じりません。これによって子クジラは乳を飲むときに同時にたくさんの海水を飲まずにすむのです。濃く、栄養価の高い乳のおかげで子供は急激に成長できます。極端な例ではシロナガスクジラの子供はなんと1時間に4.5kgの割合で体重が増えるのです。ヒゲクジラは採食するときにそれほどの速度や敏捷性が必要ないため大きくなれるのです。例えばシロナガスクジラはこれまで地球に生息した動物の中では最大の動物と考えられています。
●ミナミセミクジラ
●ナガスクジラ
●シロナガスクジラ
●イワシクジラ
●ミンククジラ
●ザトウクジラ
●ミナミツチクジラ
●ミナミトックリクジラ
●マッコウクジラ
●シャチ
●イルカ
(南極旅行&南極クルーズ6-9)