南極のアザラシ
南極のアザラシ(Antarctic Seals)
南極のアザラシは鰭脚類(ききゃく類)と呼ばれる海生哺乳類に属していて、アザラシ科とアシカ科(オットセイを含む)、セイウチ科を構成しています。南極大陸には1種類のアシカ科(ナンキョクオットセイ)と5種類のアザラシ科(ミナミゾウアザラシ、ウェッデルアザラシ、ヒョウアザラシ、カニクイアザラシ、ロスアザラシ)が分布しています。
アザラシは全て肉食性で、水中で生息するのに適したひれ状の脚がついているのを除けば、猫、犬、カワウソ、熊をはじめとする肉食獣の種類によく似ています。
鰭脚類(ききゃくるい)は海の生活に見事に適応しています。体の大きさに比べて血液量は非常に多くなっています。(同じ体重の人間に比べると2倍の量がある)血液の量が多いということはその中に溶解した酸素と二酸化炭素の量も多く、長い時間息をしなくても生きていられる特質を持つことになります。その為水中で餌をとるのに長い時間を費やすことが可能なのです。
潜っている間、その心拍数はおそらく毎分100回から4~5回に落ちます。普通は海に潜る前に排気しますが、肺は背中側にあるので水面に浮いている際には身体が一層安定するようになっています。
南極でみられる数種を含め、多くのアザラシは長い距離を季節移動します。
夏の間は流氷群周辺および海岸に集まって繁殖と換毛をします。雌は一度に一子のみを産み育てます。短い繁殖期が過ぎるとアザラシは散りじりになるので、翌年の子供のための交尾は出産してからほんの数日後に行われます。計算上の妊娠期間は9ヶ月ですが、受精卵の子宮への着床は、母体の回復が完全となる3ヶ月後位まで遅れるので出産は、ちょうど一年後となるのです。これは鯨など野生の哺乳類ではよく起こる事です。
母乳は45%が脂肪で10%が蛋白質です。(乳牛は脂肪4%、蛋白質2%、人間の母乳の乳脂肪はせいぜい3%)アザラシの子は成長が早く、殆どの種は二ヶ月で離乳します。雄は全くと言っていいほど子育てに参加しません。
外耳(External ears)
アシカ科とアザラシ科はかなり近縁ですが、いくつか重要な違いもあります。アシカ類は外耳(耳たぶ)があり、後脚は腹の下に折り曲げることができ陸上を歩行することも跳ねることもできます。前足(前鰭=ぜんき)は長く幅広で、泳ぐときはプロペラの様な推進力を送ることができます。ひれの裏は毛がなく、爪はそれぞれのひれの真ん中の3つの足指についているだけです。
反対にアザラシ類は外耳(耳たぶ)がなく、後脚は体と平行に後ろに向かって真っ直ぐに伸びています。そのため陸上では尺取虫や芋虫のようにどちらかと言えば不恰好な様子で這い回らなければなりません。前足は短く、後ろ足を水中で移動する時に推進力として使用します。ひれは全体に毛に覆われていて、全ての足指に爪がついています。
あらゆる違いの中でもっとも大きな違いは毛皮の構成です。オットセイは密生した豪華な毛皮を持っています(英語でFur Seal=毛皮あざらし)。毛皮は粗毛と内毛の二つの異なる毛で出来ていて、それらが束になっています。長い粗毛1本ごとに約70本もの内毛が取り囲み、これが寒さに対する極めて効果的な断熱保護層となっているのです。このことがまた一時は高級毛皮として高い値段がつけられて取引されたため、乱獲の原因ともなったのです。(南極まで来ないアシカの毛皮はそれほど密ではありません。)
一方、アザラシは体を強烈な寒さから断熱するために主として皮下脂肪に頼っています。表毛はありますが厚くもなければ豪華でもありません。粗毛と内毛はありますが、それぞれの粗毛の下にほんの数本の内毛があるだけです。
●ナンキョクオットセイ
●ミナミゾウアザラシ
●ウェッデルアザラシ
●カニクイアザラシ
●ヒョウアザラシ
●ロスアザラシ
(南極旅行&南極クルーズ6-8)