南極のイカ類
南極のイカ類(Antarctic Squids)
南大洋にはイカが豊富にいます。しかし南極の生態系の中で重要な位置を占める割にはイカの研究は殆どなされていません。イカはオキアミの捕食者で、逆に歯クジラ、アザラシ、大型の海鳥、コウテイペンギン、そして魚たちの大切な餌になっています。イカとその親戚のタコ(南極水域ではイカほど重要性はない)は無脊椎動物です。ともに頭足動物として知られ、カタツムリ、ナメクジ、ハマグリ、カキなどと同属です。しかしながら、彼らの高度に発達した知覚神経系は、大型の捕食性脊椎動物にひけをとりません。イカは二つの肉付きの良いヒレで舵取りをしながらゆっくりと泳いで移動します。頭の下には圧力をかけて水を噴出するじょうご状の管があり、その働きによって水の噴流を作り出しています。この結果、イカはすばやく前後に動くことができます。その構造が獲物を獲ったり捕食者から逃れたりするのに役立っているのです。
イカは通常二つある長い触腕で(触腕は全部で10本あります)獲物を捕まえます。触腕の吸盤はもがく獲物をしっかりと押さえつけるのに役立ちます。そして捕まえた獲物を口に持ってゆき、力強い硬いくちばしで細かく刻んだ後呑み込みます。イカの生物学や生態学を研究するのは簡単ではありません。というのも視力が良く、素早く力強く泳いで、網を簡単に避けることが出来るからです。また、ほとんどのイカは深海に生息しています。その為、イカを研究するには、イカの捕食者の胃袋から取り出されるあまり消化されていないくちばしに頼る他ないのです。一頭のマッコウクジラの胃中から18,000個ものイカのくちばしが発見された事があります。南極海域のイカは他の海域のどこよりも生態が判明されていないものです。ただ回収されたくちばしから南極に生息するイカの数種類がわかっているだけです。
現在、南極の頭足類のライフサイクル、成長率、生殖の生態については実質的に何ら情報が得られていませんが、海鳥、クジラ、アザラシなどが年間3,400万トンのイカを食べると推定されてきました。この数字を基に計算すれば南極のイカは少なくとも合計約1億トンに達するものと思われます。
商業的イカ漁(Commercial Squid Fisheries)
数世代にわたる大規模なイカ・タコ漁が地中海、東南アジアそして、日本海域で続けられてきました。日本は1960年代後半からニュージーランド周辺で商業イカ漁を行ってきました。現在ヨーロッパやアジアの国々の漁船がフォークランド諸島周辺およびアルゼンチン沖合の海域で大量のイカ漁をしています。
そして次第に更に遠くへ新たな漁場を目指しての開拓が行われているので、多くの科学者たちはやがて、南極海域でもイカ漁が開始されるのではないかと心配しています。イカの生産量を正確に見積もり、妥当な管理計画を築くためにも、更に多くの研究がなされなければなりません。これがCCAMLR(南極の海洋生物資源保護に関する条約)の主要目標です。
(南極旅行&南極クルーズ6-5)