オゾンホール
オゾンホール(The Ozone Hole)
大気現象研究によれば両極上空の風の動きに局地的な変化が見られ、その変化が冬期間の数ヶ月に、地球の他の部分から極地の空気を遮断する傾向があるという事が報告されています。この遮断作用は空気の温度が最も冷たくなった時に最も完璧な形を取る様です。北極ではこの現象が二ヶ月間に亘って続き、南極(冬季は隔絶してさらに極寒状態になる)では五ヶ月間も続きます。
1985年に英国の南極観測局が1957年から開始された南極気象の長期観測による結果を発表しました。記録採取が開始されてから毎年9月から11月の間、南極の上空のオゾン(低い大気の中にはほとんど見られない酸素の形のひとつ)の著しい枯渇傾向が見られるという報告でした。ケンブリッジにある観測局では、南極上空のオゾン層の希薄化は1976年頃から大幅に増加していると報告しています。最大になる時点では、南極上空を覆う年間のオゾンホールがアメリカ合衆国全土以上の広い面積になっているのです。
オゾンは、成層圏の中に少量あるものです。しかしながらオゾン層は地球全体を覆う膜の様な形で人類や生物を致命的な紫外(UV)放射線から保護してくれる非常に重要なのです。放射線はその波長からA紫外線とB紫外線の二つに分類されます。(B紫外線はA紫外線より波長が短い)B紫外線は生命にとって一番危険な紫外線です。人間にとっては日焼けや皮膚癌の原因になると同時に白内障を起す誘因ともなります。同時にバクテリアから食料用の穀物を含めた植物に対しても被害を与えます。
最近になって南極大陸のアンバース島にあるアメリカのパーマー基地での研究結果から、増大ししたB紫外線はプランクトンの光合成による増殖を妨げるという報告がなされました。ケイ藻などの小型植物プランクトンが最も被害を受けているようです。この様な変化は、どの様なものであれ南極の食物連鎖の基本を破壊し全体のエコシステムに多大な影響を与えかねません。増加したB紫外線がカイアシ類を殺しているという同様な報告がありますが、まだオキアミに対する長期的影響があるかどうかは解明されていません。オゾン層の破壊には各種ガスの影響が考えられますが、最大の被害を与えるのは塩素なのです。塩素ガスは人間が製造した冷蔵庫や冷房器具の冷却材、溶解剤、プラスチック成形、エアスプレー用高圧ガスなどに使用されるフロンガス(CFC)化合物に含まれるもので、それらが大気中に発散されて塩素ガスが上空に達するのです。
南極での研究が人類に最初の警告を与える一方で、オゾン層が北極上空でも定期的な希薄化をこうむっていることが判明し、その他の地域でもより少ない規模の希薄化がはじまっている様です。その為、現在多くの国々がフロンガスやそれに関連する化合物を使用する製品の製造規制を始めています。
(南極旅行&南極クルーズ5-6)