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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

ニュージーランドの亜南極諸島

ニュージーランドの亜南極諸島(New Zealand’s Subantarctic Islands)
ニュージーランドの亜南極諸島を形成する5つの群島は全て国立自然保護区に指定され厳重な保護がなされています。この諸島を訪問するグループは自然保護省の人間の付き添いが必要になります。ここはマッコーリー島より幾分北に位置するため動植物相も異なっています。島それぞれが独自の植物相と動物相を有しています。これら多くの島へはかつてアザラシ猟師たちが次々とやってきてオットセイをほとんど絶滅させた上、外来動物も持ち込んだのです。しかしながら、長期に亘る外来動物駆除計画と総合的な保護政策のお陰で、固有の野生動物や植生は大幅に回復しつつあります。キャンベル島は、2001年に行われた駆除作戦でドブネズミを含む外来動物は除かれています。

一般訪問者が許されるのは選ばれた数島に限られるのですが、通常次の3島があげられます。
・キャンベル島 =南緯52°ニュージーランドのブラフ港から南に700㎞
・エンダービー島=南緯50°オークランド諸島の一つ。ブラフ港から南に465㎞
・スネアーズ諸島=南緯48°ブラフ港から南に僅か209km
これらの島々はいずれも寒冷多湿の気候で風も強いのですが、他では見られない特異な自然の宝庫です。

キャンベル島(Campbell Island)
この島は1810年にオーストラリア人のオットセイ猟船長フレデリック・ハッセルボローによって発見されたものです。この年ハッセルボローはマッコーリー島も発見しています。この島は火山性起源の島ですが圏谷(カール)、切り立った渓谷、フィヨルドなどで氷河が存在した形跡も残しています。土壌は他の全ての島同様大部分がピート層で、タソック草、湿原、鬱蒼とした潅木、背の低い樹木の森林が混じりあっています。1980年代に外来種の羊が排除されてから植生、とりわけ巨大植物群が回復し始めているのが見られます。キャンベル島固有のワスレナグサ、ヒナギク、リンドウ、二種類のキンポウゲ、それにイネ科の植物です。

動物に関するこの島の呼び物はこの島が世界最大のシロアホウドリの繁殖コロニーである事です。他の4種類のアホウドリも見られます。ミナミゾウアザラシも繁殖していますが、近辺の他の場所と同様に個体数が減少傾向にあるのが心配です。ただその理由はまだ判明していません。珍しい大型のニュージーランドアシカも多数生息しています。アホウドリは、風の強い高台で営巣します。そこには、オオフトモモ林から草原や沼地を木道に沿って約4㎞歩いて到達します。終点近くで巨大植物園を通り抜け、霧の立ち込める西岸の風にさらされた崖に着きます。

エンダービー島、オークランド諸島(Enderby、 Auckland Islands)
オークランド諸島も火山性の諸島です。本島は南極海随一豊富な植物群が繁殖しており、維管束植物(シダ類など)は233種を数えます。この諸島は1806年に捕鯨業者のアブラヒム・ブリストーによって発見されました。歴史上重要な年は1840年で、3人の有名な南極探検家がエンダービー島の対岸にあるオークランド島のロス港に投錨したのです。最初に到着したのが、パーパス号に乗ったアメリカ人のチャールズ・ウィルクスでした。ウィルクスは自分の発見に満足し、乗組員たちは「チャウダーとフライで到着を祝った」と報告しています。その二日後、フランス人のジュール・デュモン・デュルヴィルがアストロラブ号とゼレー号で港に到着しました。お抱えの芸術家ル・ブレトンはロス港で素晴らしい風景画数点を描き上げています。最も重要な訪問者はイギリス人のジェイムズ・クラーク・ロス で彼はエレバス号とテラー号を率いてやってきました。同乗していたのが植物学者のジョセフ・フッカーとデービッド・ライアルで、二人はそれまでに報告された事が無かったものを含めて80種の顕花植物を採取しました。エンダービー島ではその後の訪問客や居住者たち(アザラシ猟業者やヨーロッパ人、マオリ族の家族や漂流した人々を含む)によって植生が著しくゆがめられてきました。こうした人々と持ち込まれたたくさんの動物は島の植物相に大きな被害を与えたのです。上陸海岸には小規模の夏季研究センターがあり、その背後には絡み合ったメトロシーデス(オガサワラフトモモ属)の森が広がっています。1993年には、持ち込まれた最後の動物が駆除されて植生が戻りつつある事がはっきり分かります。

長さ約5km、幅2km足らずの小さなエンダービー島は野生生物の楽園です。世界に三ヶ所しかないニュージーランドアシカの主要繁殖地のひとつがこの島にあります。集団繁殖はしない為、世界で最も絶滅の危機に瀕しているキンメ・ペンギン(キガシラ・ペンギン)も他のどの島よりも多くここで繁殖しています。他にも繁殖中のシロアホウドリ、オークランドヒメウ、オークランドチドリ、それに飛べないチャイロコガモなどもこの島に生息しています。上陸地点からメトロシーデスの林、アホウドリが巣をつくるヒースを抜けて北岸の断崖まで木道が続いています。そこからガイドに従って島の東側をめぐる(途中、天候等によっては困難な場所もある)数時間のハイキングも可能です。よく保存されている難破漂流者の避難小屋(1880年)は、上陸地点近く林間にあり、今は近代的夏基地となっており生物学者が務めています。

スネアーズ諸島(The Snares)
1791年、ジョージ・バンクーバー船長によって発見されたこの小さな諸島は、面積こそ僅か328ヘクタールしかありませんが、この島で繁殖する海鳥の個体数は600万羽を越えると推定されており、これはイギリス及びアイルランド周辺で見られる海鳥の総個体数にほぼ等しい数です。このうちの大半はハイイロミズナギドリで、日暮れ前に集まり、暗くなると一斉に薄黒い渦巻雲の様になって自分たちの巣を目指して空から素早く舞い降ります。その様はまさに自然界の驚異です。但し、訪問者はスネアーズ諸島に上陸することは出来ません。なぜなら島の地面に蜂の巣状に掘られた海鳥の巣を破壊してしまう恐れがあるからです。島を観察するのに最適な方法はゾディアック・ボートで海岸沿いにゆっくりとクルーズする事です。この諸島固有種のハシブトペンギン(Snares crested penguin)たちがお気に入りの上陸地点(奇しくもペンギン・スロープと名付けられた)から海に出入りするのをはっきりと観察する事が出来ます。他には固有の二種の鳥ニュージーランドアホウドリとハジロアホウドリの亜種を見る機会がたっぷりとあります。高性能の双眼鏡を持参した熱心な野鳥観察者なら、こことニュージーランド沖合の僅かに限られた場所でしか繁殖していないマダラシロハラミズナギドリの姿も探してみたくなる事でしょう。但し、これらの鳥は暗いうちに繁殖地に出入りするので、容易に発見できないと言えます。ただこの二種の他にも島の固有種であるムカシジシギのスネアーズ諸島亜種(Snares snipe)、シダセッカ(Snares Fern bird)、スネアーズヒタキ(Snares tomtit)といった珍しい鳥を見る事が出来ます。

ニュージーランド領亜南極の諸島は非常に珍しい自然にあふれていて見るべきところが多いので、いつも好天とはいえない島の天気も訪問者はあまり気にしません。

(南極旅行&南極クルーズ2-9)