南極を訪れる人への手引き
南極を訪れる人への手引き(Guidance for Visitors to The Antarctic)
南極での活動は南極条約機構と称される1959年の南極条約および関連協定によって規制されています。この条約では南極を平和と科学の地域であると規定しています。
1991年、南極条約協議国会議は「環境保護に関する南極条約議定書」を採択し、その中で南極を自然保護区に指定しました。この議定書は環境についての基本方針、手続き、南極環境とそれに関連する生態系の包括的保護に関する義務を細かく規定しています。協議国会議はこの議定書の条項を可能な限り各国の法体系に遵拠して適用されるべきことに意見の一致をみております。本議定書は1998年に発効しました。
「環境保護に関する南極条約議定書」は観光、非政府関連活動及び国家的活動を含む、南極条約を批准した各国のすべての活動に対して適用されます。これらの行動が南極の環境及びその学術的価値や美観を損ねる事が無いようにする為です。この「南極を訪れる人の手引き」は訪問者の皆様が一人残らず南極条約とその議定書について知り、その規定を遵守できるように意図したものです。訪問者の皆様は南極活動に適用される自国の法律や規則を遵守しなければなりません。
1、南極の野生生物を保護しましょう(Protect Antarctic Wildlife)
南極の野生生物を捕まえたり、害を及ぼしたりする行動は固く禁じられております。但し関連国家発行の特別許可証を所持した場合のみを例外といたします。
・ドローンを含む飛行機、船、小型船舶等の交通手段を用いて海や陸の野生生物の生態をおびやかしてはなりません。
・餌を与えたり、触ったり、鳥類やアザラシの習性が変化してしまう程のやり方で取り扱ったりしてはいけません。近づいたり、写真を撮ったりする場合も同様です。
・動物が餌を食べているときや換羽している時は特に注意してください。
・コケに覆われた平原や地衣類で覆われた岩場の斜面を歩いたり、ドライブしたり、車から降りて歩いたりする時は植物を痛めないように充分に注意をしてください。
・銃や爆薬は使わないでください。騒音は常に最小限に抑え、大きな声で話したり、突然叫んだりして野生生物を驚かさないようにしてください。
・南極固有種ではない家禽、ペットの犬や猫及び植物とその種類は絶対持ち込まないでください。
2、保護区を尊重しましょう(Respect Protected Areas)
南極大陸ではさまざまな地域が生態学、科学、歴史、その他の分野で特別な価値を有している為、保護が加えられています。それらの保護区に於いては関連国家発行の許可証が無ければ立ち入る事ができません。史跡、遺跡、その他特別指定地域やその付近では特定の制限を受けます。
・どこの場所が特別保護や制限を加えられている地域なのか、また、入場や活動が許されているのは何処なのかを事前に知っておくことが大事です。
・適用される制限を守りましょう。
・史跡、遺跡、遺物に傷をつけたり、持ち去ったり、破損したりしないでください。
3、科学観測を尊重しましょう(Respect Scientific Research)
科学観測施設、設備の妨害をしないでください。
・南極の科学施設や付属施設を訪問する場合は事前に許可を取り、到着の24~72時間前に手配の再確認を行い、また関連規則を守るようにして下さい。
・科学機器や標識柱の妨害をしたり、持ち去ったり、あるいは実験研究基地や野外調査キャンプまたは補給品を荒らしたりしないでください。
4、安全に配慮しましょう(Be Safe)
南極の過酷で変わりやすい天候に対応する為に、適切な衣服や装備を整える事が不可欠です。南極の環境は、時に訪問者に快適ではなく、予想がつかないものであり、常に危険な要素が潜んでいる事をご承知おきください。
・南極の過酷な気象や地形などの条件の下で、ご自分に何が出来るか、何が出来ないかの能力の限界を事前に熟知して、常にそれを念頭に入れて、何をなすにも安全第一で行動してください。
・陸上でも海上でも野生生物たちからは安全な距離を置いて観察する様にしましょう。
・探険ツアーのリーダーやスタッフの指示や助言に耳を傾け、グループから離れて一人で行動する様な事はしないでください。
・事前に安全が確認されない氷河や雪に覆われた地面を、適切な装具なしに歩かない様にしてください。雪や氷の下には表面からは見えないクレバスがある事があり、命の危険に晒される場合もあるからです。
・万一災害に遭っても救援隊が駆けつける事を期待しないでください。
綿密な計画、適切で充分な装備、熟練したリーダーの付き添いがあってこそはじめて安全な旅行が達成されるのです。
・確実に緊急性を要する場合を除いて緊急避難用シェルターにみだりに足を踏み入れないでください。万一遭難をしかけてシェルターに保管されている緊急食料や装具を使った場合は、遭難の危険が去った後で必ず近くの基地や各国の関係機関に通知してください。
・建物の内外では絶対に「禁煙」をお守りください。火災事故は南極の様に乾燥した地域では想像以上に大きな被害をもたらします。火気の取り扱いには充分にご注意ください。
(南極旅行&南極クルーズ1-1)