バード島
バード島はサウスジョージア島北西端沖にある長さ約5㎞の島です。
種類と数に置いて、この小さな島は世界屈指の豊かなワイルドライフの密集地です。オットセイの数は20世紀中増加し、特に過去20年の間は驚異的な増加です。
今では毎年65,000頭余りが産まれ、おそらく18世紀末にオットセイ猟が始まった頃の数と考えられます。
この島で繁殖する鳥には、3種のペンギン、4種のアホウドリ、固有種であるタヒバリ、キバシオナガガモがいます。およそ5万番のペンギンそして、最近数が減ってはいますが14,000番のアホウドリが繁殖しています。
ドブネズミがいないため、何十万番という数の巣穴で繁殖するミズナギドリ類、そして良い数のキバシコガモとタヒバリも営巣しています。
ドブネズミや他の外来動植物が根付かないように用心深い方策がとられました。
バード島のオットセイとアホウドリの観察は1950年代から始まり、BASは1970年代からオットセイと他の鳥類のモニターを行っています。
1982年以来、小さな観測基地が通年機能しています。
夏は最多10名が観測を行い、うち4名が冬も居残ります。
3名が科学者で、1名は建物修理や配管などの設営担当です。
バード島の主な観測内容は海鳥とオットセイの捕食習慣、繁殖成功率などについてです。これは南極エコシステムの変化を計測する、BASの長期的モニタープログラムの一環です。これらの研究は国際環境保護に寄与しています。
商業漁業がエコシステムに与える影響を観察することにより、南極海海洋生物資源保存委員会(CCAMLRカムラー)が行うエコシステム観察プログラムの任務を担っているのです。
例えば、繁殖する全てのワタリアホウドリに認識札が付けられ、繁殖の成否が記録されます。
オットセイ、ヒョウアザラシ、マユグロアホウドリ、ハイガシラアホウドリ、南北オオフルマカモメ、ゼンツーペンギン、マカロニペンギンの繁殖状態を幾つかの営巣地で観察し、ほとんどの食べ物のサンプルも採取しています。
水産物を捕食する海鳥やアザラシ類は海洋エコシステムの繊細な指標であると考えられていますから、これらをモニターする事はサウスジョージア周辺の海,さらに広くスコシア海全体のエコシステムの生産性や健康度を測る上で計り知れないほど重要です。バード島で集めた捕食者に関するデータは商業漁業によるインパクトを測るうえで重要です。
捕食者のモニターは小規模ではありますが補助的に、ペンギンとオットセイが別の海域で捕食しているキングエドワード・ポイント(KEP)でも行われています。
ハイイロアホウドリを除いて他の全アホウドリは、主に漁業事故死により減少傾向にあります。アホウドリの生活史と態度の異なった局面―数量、統計、食性、捕食などをモニターする事は餌の供給量の変化や漁業によるインパクトに関する極めて重要な情報が分かり、漁業経営を助ける事となります。
毎年、全島のワタリアホウドリの番を数え、ハイガロシラ、マユグロ、ハイイロアホウドリ、南北オオフルマカモメはあらかじめ選定した営巣群内の番数を数えます。
ワタリアホウドリは全て、その他は選ばれた繁殖地の成鳥と雛に認識票が付けられており、大方の鳥の年齢は分かっています。
毎年その認識票を調べる事により生存率、繁殖率、巣立ちした幼鳥が繁殖のために戻ってくる率などを知る事が出来ます。
この情報は数量の変化の背後にある事情を知る事になります。
その上、印をつけた鳥の繁殖履歴をよく調べる事により、個体別繁殖率に影響しているかもしれない年齢、番の変更などの要素を分析できます。
オットセイの雌は海域環境の変化、特に夏中の海域別オキアミ量の恰好な指標です。16週間以上も子供に授乳するために頻繁に採餌旅行(1~14日)に出かけてエネルギーを継ぎ足さなければなりません。
餌が豊富な時は採餌旅行が短く、少ない時は餌を探して長くなります。
オキアミは南極食物連鎖の要で、バード島で繁殖するほとんどの捕食動物にとって重要です。夏は毎週、冬のオットセイの数が少ない時は隔週にオットセイの排泄物を調べる事により、オキアミの大きさが観察でき、オキアミの成長と加入パターンを知る事が出来ます。
(南極旅行/サウスジョージア島27)