キングエドワード・ポイント
ディスカバリー号観測(1920年代)による駐在に続いて、キングエドワード・ポイント(KEP)は1950年代に短期の色々な観測プログラムが行われた場所でした。
その後、1969年11月から1982年4月のアルゼンチン軍による閉鎖まで英国南極観測局(BAS)用の主要観測基地でした。
フォークランド紛争後、英国守備隊の駐在が2001年3月まで続きました。
その際に、サウスジョージア政府を代表してBASは、漁業調査用の新しい研究・調査基地を建設しました。
調査の主目的は、持続可能な漁業経営のための科学的助言を提供する事です。
研究所は3棟の一階建て建物から構成されています:ジェームス・クック研究室、エヴァーソン・ハウス(主宿泊棟)そしてラーセン・ハウスと付属のボート小屋(工作室、食糧庫を含む)です。
電力は入り江の反対側にある水力発電所から来ており、以前のような電気や暖房用に化石燃料を燃やす必要は無くなりました。
ジェームス・クック研究室は2つの実験室、標本保存用の大冷凍室、事務室、見本庫そして通信室から成り立っています。エヴァーソン・ハウスとラーセン・ハウスでは夏季に26名まで収容可能な休憩室もありますが、冬季には人員は9名(科学者2名、設営人員7名)となります。
設営人員は基地隊長、ボート担当2名、医師1名を含みます。
医師はキングエドワード・ポイントの人員のみならず漁船の船員も診察します。
KEP研究スタッフによる通常の漁業関係の研究以外にも、他の研究所からの科学者もKEPを訪れます。
最近では沿岸および深海無脊椎動物の研究もされています。
BASの科学者は商業漁業で捕られているマジェランアイナメ、コオリウオ、オキアミなどの生物学的・エコロジーの研究を行います。
魚とオキアミの捕食習慣、成長度合い、繁殖状態と個体群の推移などの研究を、トロール漁船を調査用にチャーターして収集した標本を使って行います。
その結果は魚群の大きさの計算やそのエコロジー研究に使われ、さらに南極海海洋生物資源保存委員会(CCAMLRカムラー)が毎年の的確な漁業割り当て数を設定できるように使われます。調査研究は漁業作業中に偶然捕獲してしまう、混獲類のエコロジーについてもなされています。
この研究はマジェランアイナメの混獲種として知られるカンギエイやソコダラなどの生物学的理解を高める事になりました。もう一つの重要な研究は、オキアミ用トロール網にかかる幼魚の判別です。漁業保護船ファロスSG号はカンバーランド・ベイと外洋で定期的にトロール採集をしています。
これは幼生期の魚の判別、分布、豊かさなどを長期的にモニターするプログラムです。2001年以来、25種類以上の幼生期の魚が判別されました。
漁業産業は、漁船に同乗する漁業オブザーバーが魚のサンプルを採り、KEPに持ち帰って記録された後、英本国で分析されます。
2009年から、KEP近くのマイヴィケンの営巣地のゼンツーペンギンとオットセイの食習慣、繁殖成功率およびカンバーランド・ベイ沖での捕食などに関する長期的モニターが始まりました。これは、バード島の高次元捕食者に関するモニターを助けています。結果はバード島とマイヴィケンで繁殖する高次元捕食者は別々の海域で捕食することが分かり、漁業マネジメント上色々な情報を与えています。
(南極旅行/サウスジョージア島26)