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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

外来種の侵入

世界中のいろいろなところから持ち込まれた外来種は在来種と競合し淘汰してしまいがちなので、在来種保護のためには最も深刻な問題です。
陸上および海洋エコシステムに破壊的な結果をもたらしかねません。
世界的にみると、旅行者数が増すにつれて状態は悪化しています。

気候変化のインパクトはサウスジョージアでは、島北部の氷河が高速度で後退しつつある事が、既に顕著です。今までは氷河がドブネズミ、イエネズミ、トナカイなどの土着でない動物がいる部分を分離しているので、氷河の後退は深刻です。
このまま後退が続けばこれらの動物が新しい部分に侵入してしまうかもしれません。温暖化と訪問者の増加で、侵入する外来種の植物や無脊椎動物が島に居着いてしまう危険が高まっています。
島に来る船が、より暖かい海域から外来種を船体に付けたり、バラスト水に混じったりして持ち込むかもしれません。過去にはそのような種類は低温の海水で生き残る事はありませんでしたが、上がりつつある気温でその可能性が高くなっています。外来種の移入を見張るモニターシステムが出来ています。

捕鯨時代には、サウスジョージアに様々な動物が持ち込まれました。
それらは家畜、羊、豚、馬、ウサギ、犬、猫、家禽類、小鳥などで、さらにレイス・ハーバーでは伝書鳩さえ短期間使われました。
食料用に持ち込まれたもの、使役用そして愛玩用など目的は色々です。
狐は毛皮用に飼われていましたが、うまく繁殖しなかったようです。
フォークランドからのマゼランガンと野生ウサギの移入は失敗でしたが、豚の飼育は基地内の落ちている鯨肉を漁る事が出来たので成功しました。
猫は基地の建物内で1980年位までいました。

意図的な移入のうち、唯一効果的かつ深刻なものは、肉のために持ち込まれたノルウェー産トナカイでした。
バーフ半島のオーシャン・ハーバーに最初(1911年)に移入したトナカイは、駆除直前には推定2,000頭がバーフ半島先端からロイヤル・ベイまで拡散していました。
ルウィン(ブンセン)半島には2回ほど移入されました。最初の移入組(1912)は雪崩で死に、1925年に再移入された群れは、フォーツナ・ベイの西側からストロムネス、ハスヴィック、レイス・ハーバーを含めてカンバーランド・ウエストまで推定1,000頭が広がっていました。
サウスジョージアのトナカイは植物への影響が大きな問題でした。
トナカイの餌は主に草とカヤですが、地衣類やウチワバリなどの薬草類も食べます。冬になって背の低い草がほとんど雪で隠れてしまうと、タソック草ばかり食べ尽くしてしまい、さらなる土壌の浸食が進みます。

ドブネズミはアザラシ猟船や捕鯨船で意図せずに移入されたものですが、今や島沿岸部のタソック草区域の三分の二にいます。小さいイエネズミの群れは2つあります。
これらげっ歯類は島のエコロジーに大変なインパクトをもたらしました。
ドブネズミの主食はタソック草で、副食にコガネムシ類や小さな動物を食べますが、アザラシの死骸やペンギンそして地面に営巣する小型の鳥も襲います。
いくつかの場所で、小型ミズナギドリ類やタヒバリなど地面に穴を掘って営巣する鳥類を見かけないのは、ドブネズミが原因です。
ここ2世紀の間、多くの顕花植物がサウスジョージアに、多くは捕鯨基地で飼われていた家畜用の餌の種として持ち込まれました。
そのうち35~40種類は今でも生存しています。
捕鯨基地近くの比較的暖かい場所でしか生存できないものはその後死に絶えました。今生き残っている、タンポポやツルキンポウゲなどは捕鯨基地周辺でだけ見られますが、スズメノカタビラとハコベはもっと広く広がっています。
最近では他の移入種タネツケバナ属とツメクサアザナがキングエドワード・ポイントとグリトヴィケンで記録されています。

(南極旅行/サウスジョージア島25)