鯨
サウスジョージアは鯨で有名ですが、最近ではあまり見られない事は悲しい事実です。60年間にわたる執拗な捕鯨で群体が完全に破壊されてしまったのです。
鯨は現在、南大洋鯨保護区の一部であるサウスジョージアの海域で完全に保護されています。
ディスカバリー号観測の科学者は鯨の死骸を調べましたが、最近の調査はサウスジョージア海域を行く海洋調査船から生きている鯨の習性を調査研究します。
オキアミや海洋調査データなどと鯨の視覚的および音響観察を調和させる事により、鯨がどこで採餌し、どのくらい食べて、採餌にかかる時間などを知り、それにより、鯨が大洋全体の生態系のどこに位置するのかを知ろうとしています。
鯨はサウスジョージアまで採餌に来ます。サウスジョージア周辺の海域には、南大洋におけるひげ鯨がほとんどこれだけ食べるというオキアミが膨大な数でいます。
冬の間のクジラは北の暖かい海域に移動して交尾し、出産しますが食べません。鯨類は南半球の夏の間に豊かな南極海で採餌して蓄えた脂肪で体力を維持できるのです。
何頭かのクジラはサウスジョージアで夏を過ごしますが、大抵は通り過ぎて南極海氷のヘリまで行きます。鯨はオキアミが集中している、島の北東側とシャグ・ロック付近の海域で最も多いようです。
ザトウクジラとミナミセミクジラは特に陸に近い場所でも見られますが、他の種類は海が突然深くなる大陸棚の淵近くで見られる事が多いようです。
この海域は湧き上がり海流のために餌が豊富だからです。
ほとんどの鯨の観察は噴気(潮吹き)後ほんの少し見える背中ぐらいですが、時には水から飛び上がったり(ブリーチング)、ぐるっと回転したり、胸鰭で水をたたいたりするのを見られる事もあります。これらの行動の意味はよくわかっていません。
遊んでいるかも、あるいは何かの交信なのかもしれません。
過去数年間にクジラは、特にミナミセミクジラとザトウクジラは、サウスジョージア周辺海域でも見られる頻度が多くなっています。
捕鯨による激減からほんの少し回復したのかもしれません。
それでも、最近のオキアミの減少を鑑みると、捕鯨以前の状態に戻る事はないかもしれません。
(南極旅行/サウスジョージア島20)