長距離飛行
翼の長いアホウドリやフルマカモメ類が、風がないような時でも翼をほとんど動かさずに海面上を滑空する様子には感嘆せずにはいられません。
彼らが風から飛ぶためのエネルギーを引き出すメカニズムはまだよく解明されていません。上昇するときは、波の後ろ側に沿って滑空してから波頭の上に出ます。
ほとんど垂直になるほど旋回する事により翼の下側に風が当たり上昇できます。
風下に飛ぶ際の上昇は簡単ではありませんが、逆風を捉えて旋回し浮力を得ます。
鳥はさらに地面効果(表面にごく近い場所を滑空する事による摩擦を少なくする)を使って翼を動かさずにかなりの距離を滑空する事が出来ます。
さらに、風下へ、波頭に着く位まで飛ぶ事によりスピードを得てから旋回して風に向かって上昇する事もします。
翼をほとんど動かさずに元の高さまで戻れるのは2つの理由があります。
風速は水との摩擦により水面近くの方が遅く、高さ15m位になると風速が増します。鳥が風に乗って上昇するときに地上速度は落ちますが、高くなるにつれ速くなる風により対気速度はそれほど落ちないのです。
波の上を渡る風を利用するには気圧のわずかな変化も察知する必要があります。
アホウドリやミズナギドリの管鼻にはそのための繊細な器官があると考えられています。
このように、翼の長い海鳥は餌を求めて広大な海域を移動する事が出来るのです。バード島で営巣するワタリアホウドリは巣にいる雛のために定期的にブラジル沖まで飛びますが、雛にやる餌1~2㎏を得るための一回の往復飛行に8日間、距離にして8,000㎞かかります。極めて省エネの飛行でないとそれは実現できないでしょう。
(南極旅行/サウスジョージア島15-5)