変わった繁殖パターン
キングペンギンは求愛から雛の巣立ちまで14ヶ月かかるので、1回の繁殖過程が1年以上となります。産卵は11月から1月中旬まで様々で、54日間の抱卵期間後1月半ばごろから孵化し始めます。冬(5月~8月)の間、餌が乏しく,親からの食べ物は期待できませんから、雛はそれまでに蓄えた脂肪を頼りに生き延びなければなりません。
その間、何羽も集まって、寒くないようにクレシュと呼ばれる群れ状態になります。餌が再び豊富になる9~10月頃になると雛も餌をもらえるようになります。
体重が増え、親羽に換羽し、9月下旬以降に海に出ていきます。
両親も子育てのために減った脂肪の蓄積を海で取り戻し、陸に戻って新しい羽に換羽し、新しい繁殖サイクルを始めます。
遅く産卵した卵から孵化した雛は冬を乗り切るほどの大きさに育つ時間がありません。雛が死ぬと両親の親鳥は営巣地を離れて海に出ます。
また、雛が死んだ親鳥は、成功した両親同様翌シーズンは子育てせずに休むようです。あるいは、11月に戻ってくることもあります。
ですから、長い子育て期間が必要なキングペンギンは3年に2羽のヒナを育てる事となります。
キングペンギンのもう一つの特徴は高い離婚率です。普通ペンギンやアホウドリなど長命の鳥は同じ番が長続きすることが多く、繁殖シーズンの初めに慣れ親しんだ前年の番を待った方が繁殖成功率も高いという訳です。
ところが、キングペンギンの離婚率は実に80%になる事もあるのです。
その原因として考えられるのは、繁殖を始めるために営巣地に戻った時のペンギンの体力が、遅く来るかもしれない連れ合いを長い間待つほど続かない事のようです。
(南極旅行/サウスジョージア島14-2)