海洋学
サウスジョージアへの訪問者は島が見えるはるか手前から、周辺の豊かなワイルドライフ、そして海岸に群がる動物達に驚くことでしょう。
アホウドリやフルマカモメなどの遠洋海鳥が最初に見えるでしょう。
そして、ペンギン、最後にカモメ類と鵜です。オットセイが水中をイルカ飛びし、一世紀ほど前にはクジラの潮吹きがあたり一面に見えたのでした。
サウスジョージア周辺にワイルドライフが特に豊かなのには理由があります。
サウスジョージアとサウスサンドイッチ諸島は海鳥が繁殖できる数少ない陸地なのです。アメリカの鳥類学者、ロバート・クッシュマン・マーフィーは、「南極の海鳥は自分の好きな場所で餌を食べられるが、繁殖は陸地でないとできない。」と書いています。オットセイも同様です。
サウスジョージアのワイルドライフを理解するヒントも周辺の海にあります。
ワイルドライフの生命の根源は植物プランクトンです。夏の間、長い日照時間で光合成が活発に行われ爆発的に増えるのです。植物プランクトンをオキアミや他の甲殻類などの膨大な量の動物プランクトンが食べます。
動物プランクトンの群れは他の海生動物の主食でもあります。
なぜサウスジョージア周辺の海域がそれほど豊かなのか、は80年前のディスカバリー号観測以来ずうっと議論の的です。現時点での有力説は鉄分を中心とした理論です。鉄分は植物プランクトンにとってほんの少ししか必要ではありませんが、海水に溶けている鉄分の長期的欠乏は南大洋をほとんど砂漠同様の状態にしてしまいます。
ところが、サウスジョージアの陸地から流れ出るわずかな鉄分が肥料のような役目を果たしていて、周辺の海域を生産性の高い海のオアシスにしていると考えられます。
(南極旅行/サウスジョージア島8)