エトピリカ
エトピリカ (Horned and Tufted Puffins)
北太平洋種のツノメドリ類はずんぐりした中型の海鳥で、大きくて派手な色の嘴が特徴、別名「海オウム」とも呼ばれています。
白い腹部と眼の上の小さな肉質のツノが特徴のツノメドリは大西洋種のニシツノメドリに近い種ですが、一回り大型です。
頭を除いた全身が黒色で、眼の上の長く黄色い房が特徴のエトピリカは少し遠い種類です。繁殖期が終わると、両種とも派手な嘴の色と房毛を落として冬用の暗褐色の風采となります。
両ツノメドリ共ほぼ同一の生息地域(アリューシャン列島、チュクチ半島、カムチャッカ半島など)を持っています。
両者とも岩の割れ目を巣に選びますが、とりわけエトピリカは草地の地面があればトンネルを掘るのを好みます。
両ツノメドリとも2~3番(つがい)から数千番の群れとなる事が多く、しばしばウミガラス、ウミバト、ウミスズメ、ミツユビカモメ、フルマカモメなどの他の群生する鳥と一緒に営巣します。繁殖が終わると両種とも遠く南の外洋に移動しますが、分布範囲ははるか北カリフォルニアや日本にまで広がっています。
ツノメドリはカラフトシシャモ、イカナゴ、シロイトダラの幼魚などを浅瀬で捕食しています。エトピリカはイカ、ハダカイワシなどの大陸棚の縁や外洋で取れる魚が好物です。繁殖の成功か否かは営巣地周辺の餌の豊富さに左右されます。
ツノメドリ雛の生育は遅く、特にエトピリカはさらに1週間育雛期間が長いのです。
両ツノメドリはいくつかの理由で北極地方の人々が珍重する産物でした。肉と卵はおいしく、羽毛は丈夫で温かく(カリブーやトナカイがいない地域ではパルカに使われた)、嘴は式服の美しい飾りに使われるなど利用範囲が大きかったのです。
以前は、人間が近寄れない場所で営巣する習慣や冬の生息海域が外洋である事などで個体数は安定していましたが、おそらく商業漁業で餌が減って変化が訪れました。
(北極旅行&北極クルーズ6-84)