南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

  • ホ-ム > 
  • 南極クルーズ・北極クルーズの手引き

南極クルーズ・北極クルーズの手引き

セイウチ

セイウチ科 (Odobenidae)
セイウチ (Walrus)
セイウチはアザラシに似ていますが、もっとずんぐりした体格をしています。
太い首は幅広い顔と短い楊枝のような触毛が生えた巨大で丸い頭を支えています。
雄の成獣のしわだらけの皮膚は大きな隆起で覆われています。セイウチの目立った特徴は上あごの2本の犬歯で、長く伸びた、強くて先端が鋭い白い牙です。
雄の成獣は北米最大の狩猟動物で体重が2㌧で体長3.6㍍にもなります。
その体重にもかかわらず、セイウチは氷上でも陸上でもかなり敏捷です。流氷の上を移動して開水域に達したり、柔軟な尾ひれを前に折り曲げて、内陸の険しい傾斜地を登ったりします。
他の鰭脚類と異なり、セイウチは首の両側に膨らますことができる気嚢(咽頭嚢)を持っています。海上で眠る時には膨らませた気嚢が頭を両側から支えて沈まないようになっています。おそらくセイウチは多くの睡眠が必要で、水中で仰向けになったり、うつ伏せになったり、あるいは垂直に浮いたり色々な姿勢で眠ります。

セイウチは騒々しく、群れとなる習性があります。流氷の上に重なり合うように群がってその重さで氷が沈んでしまうほどです。
アザラシと違って、セイウチの雌は3年に1度繁殖します。
妊娠期間は大体13ヶ月です。子は通常、春の北への回遊移動中に産まれ、出生時の体重は70㌔に達する事もあります。母と子児の絆は強く、危険が迫ると母親は子を背中に乗せて逃げます。
寿命は35年程度ですが、狩猟や自然要因でこの年齢まで達する事は稀です。
セイウチは牙を色々な用途に使います:氷や陸によじ登る時、氷を割る時、餌を獲る時、ホッキョクグマやシャチに対する防衛用武器として、群れの中で優位を示すべく誇示するため、そして雌を巡っての戦いのためなどです。
この戦いの際には深い傷を負う事もありますが、多くは回復します。
若い雄はしばしばボートに乗った猟師を威嚇しますが、カヤックに乗った狩人は特にセイウチの攻撃に弱いです。

セイウチは底生生物、主に大陸棚付近に生息する軟体動物を食べています。
水深75メートル程度まで潜れます。
他にもゴカイ、カニ、マイマイ、コエビ、ホヤなどの尾索類、トリガイなどのザルガイ科、ムール貝などのイガイ科などです。
セイウチは剛毛質の鼻先で柔らかい砂の中にいる貝類を察知して掘り起こしてしまいます。触角毛で貝の居場所を察知します。
セイウチの細い口と高い口蓋、丈夫で厚い唇と強力なピストンのような舌などで貝類の柔らかい部分を吸い取ってしまうのです。
3,000個くらいまでの貝の水管や脚が一頭のセイブチの胃から見つかっています。(25,000頭のセイウチが1日に1,270㌧の餌を食べると推定されます。)
これらの胃の内容物はエスキモーの間では珍味として珍重されており、直接そのまま食べるか、海水でゆすいで食べるようです。
セイウチの消化作用は早く、死んだ後も消化作用は続くので氷の上で即解体します。

セイウチの約1%は肉食指向でアザラシを攻撃して食べたり、鯨の死肉を食べたりも食べます。肉食性のセイウチは牙が油滲みで汚れているのでわかります。

セイウチはカリブーやジャコウウシの場合と同じように、最初のヨーロッパ人が北米に来た時には、現在の分布境界線より広く生息していました。
他の海生哺乳類同様セイウチは気候変化に敏感で、彼らの分布も氷河期後の気温変化のために劇的に変化しました。
執拗な狩猟のために一部地域では絶滅し、全域では数も減っています。セイウチは人間の営みにも敏感で、生活の邪魔をされるとその場からいなくなります。
グリーンランド人は煙の臭いだけでも逃げてしまうと言います。

セイウチは北極の周り全域に生息しており、3亜種があります:大西洋種、ラプテプ海種そして太平洋種です。大西洋種はセイブル島とセントローレンス湾までの南にかつていましたが、ずうっと昔に南の群れは絶滅し、現在、ハドソン湾北部を含むカナダ北極東部、グリーンランド、スヴァールバル諸島、そしてフランツヨーゼフ・ランドまでです。ラプテフ海種は、ラプテフ海、東シベリア海のデロング諸島(特にベネット島とヴィルキツキー島)、ベルコフスキー島で、狩猟被害は少なく済んでいます。太平洋種はチュクチ半島、アラスカ、ウランゲル島の北極海沿岸からアリューシャン列島までです。

(北極旅行&北極クルーズ6-65)