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南極クルーズ・北極クルーズの手引き

タイリクオオカミ =ハイイロオオカミ、亜種13

タイリクオオカミ (Grey Wolf) =ハイイロオオカミ、亜種13
オオカミは原始的な野生の犬で、人間に飼育されているイヌ科動物の祖先にあたります。オオカミは地域により外見が大きく異なり、北極ではほっそりしていて、色は白が多いようです。
人類を別にすれば、ハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)は現存する陸生哺乳類の中で最も広い行動範囲を持っている動物です。

オオカミは約100万年前の大氷河期中期にユーラシア原産の小型犬種系統から始まりました。更新世中期に隔絶された群れがグリーンランドやシベリア東部で生き残ったと考えられます。
そこから氷河期の初期に北米(西アラスカ)へと拡散していきました。
ベーリンジア陸橋を渡り、その後も陸橋が現れるたびに、アメリカの群れとの接触が繰り返されました。その結果、アジアの群れとアメリカの群れが別個の種類として進化する程の長い間の孤立は置きませんでした。
また、更新世の終りにグリーンランドのオオカミがカナダ北極北方の島々に分散していった事が推察されます。
今日ではオオカミは両大陸の北部一帯と南部にも局所的に見られます。
オオカミはかつて温帯、さらには亜熱帯や砂漠地域まで広い地域に生息していましたが、今日生息しているのは森林ツンドラや北極ツンドラです。

オオカミは複雑な社会生活を営んでおり、「パック」と呼ばれる群れで移動します。このパックはたいてい優位に立つ番(つがい)の雌雄、その子供たち、そしてこれら中心的家族と遺伝関係を持つ数匹の成獣オオカミから成り立っています。
優位に立つ雌は5~6月に目立たない巣穴で最多10匹までの子を産みます。
夏の活動はこの巣の周辺に集中します。群れ全体が子育てに協力し、狩りで仕留めた獲物を母子に食べさせたり、母が狩りに出かける時には他のオオカミが子守役をしたり、巣穴周辺をアメリカヒグマなどの天敵から護ったりします。秋までに子供たちは自由に歩き回れるようになり、群れはいっそう移動的になります。

オオカミは肉食獣で、消化器系全体が肉食の食生活に適応しています。
生活は狩りと見事に調和していて、ヘラジカやカリブーが豊富な時期は狩りが出来るように大きな群れで生活します。
他の群れとはっきり区別した縄張りを持っています。冬には獲物である移動性のカリブーを追ってかなりの長距離を移動する事があります。
狩りはむやみやたらと襲うのではなく容易に仕留められるものから襲うので、幼獣、老獣、病気や手負いや不具の個体を取り除く結果となります。
北東アジアではオオカミが移入されたトナカイを大量に襲うようになったため、土着のカリブーの被害が減った地域もあります。
この他にも、ヘラジカ、オオツノヒツジ、マーモット、ジリス、ウサギ、ネズミさらには産卵するサケのような魚まで、多くの動物を食料にします。
オオカミは大量の獲物を頻繁に食べる事も出来れば、必要であれば数日間何も食べない事もできます。

オオカミと人類は氷河時代のユーラシア大陸で関係が始まり、相互の存在と必要性を重んじる関係ゆえ、共に世界の広い地域に広がっていきました。やがて、人類が遊牧や農業のような生活様式を取り入れるとこの関係は必然的に変わり始めました。人類は人と家畜の安全や、増加する人口を養うための肉の競合相手としてオオカミを絶滅させようとしました。その結果、人が支配する場所ほぼ全域でオオカミは絶滅されてしまいました。

多様な生物が所狭しと生活する今日の世界では、オオカミも食物連鎖の上位の獣も養えるほど健全な自然と生態系の象徴として大切にされています。
オオカミがいる地域に住む人々もこれらの生物に対する責任を感ずるようになりました。いまやオオカミは平原や丘陵地、河川渓谷、湖畔地帯どこでも快適に闊歩しています。冬には北の極地氷河や南のタイガの針葉樹林に移動します。
オオカミはシベリア全土とカムチャッカ半島そして北部ヨーロッパのロシアとスカンジナビア、アイスランド、グリーンランド、アラスカ、カナダなど非常に広く分布しています。

(北極旅行&北極クルーズ6-26)