北極植物の成長
いくつかの環境要因が北極の植物の成長を左右する役割を果たしています。
北極は真夏の平均気温がわずか5℃、真冬で-32°という酷寒気候のため、
どれだけ夏の暖かさを得られるかが植物の存在や成長に強く影響を及ぼします。
年間降雨量は380㍉以下ですが、大陸や大きな島の内陸部では250㍉以
下で、その2/3は夏に降ります。降雪量も少なく、風上の傾斜地や平地の雪は大抵頻発する強風で飛ばされてしまいます。沿岸部では冷たい海水のためにしばしば霧が発生します。
北極地方全体が永久凍土帯のために凍結状態になっており、その南側の境界線は森林境界線とほぼ一致しています。
北極の植物生育期間は短く、霜が降りない期間(遅霜と早霜との間)は50日未満です。これは1~4ヶ月間のほぼ連続の太陽光線で若干緩和されます。
北極の土壌は水はけと通気性が悪いため、概して酸性です。
このため、土中のバクテリアによる有機腐食がゆっくりで、植物の成長に必要な窒素が低レベルです。
ツンドラの土壌は極端に湿潤か極端に乾燥している砂地かのいずれかであるため、深く根を張る植物はうまく育ちません。
この条件に対応するために、ツンドラ植物のほとんどは根を浅く広く張ります。
これらの植物の花(ホッキョクルピナス、ラップランドツツジなど)は繊細でひ弱です。植物の葉は厚手で毛が生えており、茎も柔毛で覆われています。
ツンドラの植物の全ては、より暖かく風の被害もさほどない地面に近い部分で生育します。低地北極の花は高山ツンドラの森林境界線より北で見られます。
代表的なものの中にはヤマガラシ、キジムシロ、シオカマギクなどがあります。これらの明るい色は受粉をしてくれるガ、蝶、マルハナバチなどの昆虫を引き付けます。
高緯度北極では、植物が人の手によって栽培されることもなければ収穫されることもありません。
しかし、ゆうに900種以上の土着顕花植物が見られます。エルズミア島のレイク・ヘイズンでは115種の顕花植物が、最北のピアリー・ランド(北緯80度)でも80種類も見られます。
(北極旅行&北極クルーズ6-10)