北極と亜北極の植物
森林境界線の北に広がる、なだらかな草原は高山ツンドラと呼ばれ、北極ツンドラの一部です。
この草原は普通時々見られる貧弱で地を這うような形をしたヤナギや風の力と貧弱な土壌のため倒されたカバ以外は木がありません。
北極の土壌は低温と冬の霜による撹拌作用のため成長が遅いのです。
その結果、この地方の土壌は極端に乾燥か多湿かのどちらかになってしまいます。
じめじめした水浸しの土壌はポリゴンや亀甲模様を生み出します。
高緯度北極の荒野には風がほとんどの表土や軽いものを吹き飛ばしてしまい小石しか残らないため、ごくわずかの植物しか生育できません。
このような下層土がある地域をフェル・フィールド(fellfields)といいます。
これは乾燥した砂利で覆われた、吹きさらしの場所で、植生に乏しく、主として地衣類とコケが見られます。
北極の夏は短いですが光はほぼ途切れることはなく、植物の育成に適さないと言う訳ではありません。
そこで見られる植物の種類は藻、コケ、イネ科植物、低灌木、小樹林や鮮やかな色の広葉草本と言ったものです。
風を避けられる斜面では充分な土壌と水があるので、ハンノキ、ヤナギ、カバノキなどの、低い木立が出来ます。
川の流域ではハンノキが高く鬱蒼と生えていて、これを常食としている大きなヘラジカ(ムース)が身を隠せるほどです。
ツンドラの植生は主としてスゲ、イグサ、アシおよび多年生の花の咲く植物の間には、イネ科植物とそれに混じって自在に生える地衣類とコケなどです。
これらの草の無い地域は北米ではカリブー、欧州ではトナカイの夏の餌場となり、またジャコウウシにとっては冬の餌場になり、さらにタビネズミなどげっ歯類の通年の餌場・隠れ家になっています。
ツンドラの植生が10㌢位の厚さに覆って永久凍土を保護するシートのように断熱の役目をはたして地中の氷が融けるのを防いでいます。
車などが通行してこの覆いがはがれたり、荒れて来たりすると凍った地面が急速に融けて辺りは浅い池や小川と化してしまいます。
砂礫層の土壌は通常、地を這うヤナギやコケ、地衣類でまばらに覆われています。
日当たりのよい傾斜地で、水はけが良い土壌ではユキノシタ、北極イトシジャン、イチヤクソウ、ナデシコ、ヒナゲシなどと言った丈の低い、顕花植物の緑の絨毯を形成します。
より泥炭質の土壌ではコケモモ、ビルベリー、そしてしなやかでかつ風に耐えられる茎と小さくつやのある葉を持った低灌木が主体となります。湿地帯の植物群落を特徴づけているのはワタスゲ、ミクリ、スギナモ、キンポウゲです。
(北極旅行&北極クルーズ6-9)