植物

北極の土壌はバクテリアの活動が不活発なため、リン酸塩、硝酸塩そして他の塩類が概して不足しています。
しかし、こうした養分が多量にある場所では植物は豊かに育ちます。
この事は鳥の群れが営巣する崖下や人間の集落地近くでは他の場所と対照的に草が生い茂り、花が咲いているので明らかです。
最も多い樹木は何種類かのヤナギとカバの木です。一年の内およそ10ヶ月の厳しい状況を乗り切るので成長は非常にゆっくりです。
例えば、直径わずか2.5㌢のヤナギの根はもしかしたら樹齢数世紀かもしれませんし、空中に出ている枝は非常に短くて全て地を這っています。
それでも多くの場所ではヤナギが地面を覆って土の浸食を制御するのに寄与しています夏の終わりに葉は深い赤色に紅葉します。

北極では受粉を助ける昆虫がほとんどいないので植物は繁殖ために、いくつかの戦略を編み出しました。
風は花粉を運ぶ一助となり、種子をつくるほかにも球根、根茎、および胎生の花によって無性繁殖する植物もあります。
草上の小さな植物を造り、それが地に落ちて根を生やすと言う草本もあります。
雪がなくなるとすぐに花を咲かせる植物には驚いてしまいます。
植物は長く忍耐の時間を開花のために準備するわけで、これは北極の環境に見事に適応した好例と言えます。この準備は数年に及ぶこともありますが、夏に芽吹く前にエネルギーが集められて蓄えられ、ようやく開花の準備が整います。
このように、非常に厳しい条件下での長い間の準備期間を考えると、なぜ植物を摘み取ったり殺めたりしてはいけないかが理解できます。
氷河の積もった氷塊の真っただ中にムラサキユキノシタやホッキョクヒナゲシが美しく健気に咲いているのを見ると本当に感心させられます。

（北極旅行&北極クルーズ6-4）