鳥類
非常に機動性に優れた鳥類は北極の資源が最も豊富になる時期にその特性を生かすことが出来ます。鳥類は短い春と夏の時期に繁殖のために北極地方を訪れ、資源が枯渇すると南の低緯度地方に戻ります。
ごくわずかの種類(ライチョウ、タビガラス、ゾウゲカモメ、ヒメクビワカモメ、シロフクロウ)などが北極で冬を過ごしますがその個体数はごくわずかです。
最も一般的なウミスズメ科の2種類ハシブトウミガラスとヒメウミスズメは秋にはミナミの海氷のない海域に移動します。
小さくてポッチャリしたヒメウミスズメは砕け岩場に営巣します。
ハシブトウミガラスは海に面した切り立った崖の狭い岩棚に卵一つ生みますが、その群れは南百万羽もの数になります。
ハシブトウミガラスのまだ小さくて飛べない雛が高い岩棚から飛び降りて海での生活を始めます。不思議な事に、多くの雛鳥たちははるか下の硬い岩の上に飛び降りるのですが、落下死亡率はごくわずかです。
雄親は雛の後を追い、岩棚に居る時よりもカモメによる捕食の危険がずうっと少ない海へと誘導します。一方雌親は次の繁殖期を見越して、何日間も巣場所となったそのわずかの場所を護ります。たくさんの雛が一斉に飛び降りる(通常夜に起きます)のを見守るのは感動的な経験となるでしょう。
雛達は未発達な翼をばたつかせて、雨あられと飛び降りてきます。注意深く見守っていた親鳥は短い潜水を始めて雛についてくるよう教え始めます。
これ以外の極北にいるウミスズメ科の鳥はニシツノメドリ、ツノメドリ、エトピリカのツノメドリ3種です。後の2種は太平洋海域だけで生息します。
3種とも岩穴で営巣しますが雛は羽毛が生え揃う前に親に見放されてしまうため、自分で餌が獲れるまで、それまでに蓄えた体脂肪で生きなければなりません。
これらウミスズメ類の営巣地の近くでシロカモメが繁殖しています。
この大型で白っぽい翼をした肉食鳥は他の鳥のかなりの卵や雛を捕食します。
少し小型のアイスランド・カモメ(アイスランドでは繁殖しない)は普通グリーンランド沿岸にいます。小型で美しく、黒い頭と黒・白・灰色の三角マークが翼にあるクビワカモメも夏の北極で見られます。セグロカモメに酷似していてかつて同属だとおもわれていたカナダカモメは北極圏カナダとバフィン島にいます。
純白のゾウゲカモメも氷海の美しい住人です。北極で断然多いのは海沿いの断崖で営巣するミツユビカモメです。
遠くからでも鳴き声が子供たちの遊び声のように聞こえます。
エレガントなキョクアジサシは北極全域で見られます。
この優雅なキョクアジサシの中には繁殖地の北極と数か月過ごす南極との間を1年間に35,000㌔も往復するすごい渡り鳥のチャンピオンもいます。
カモメとアジサシに近い極北の鳥類はトウゾクカモメ4種類:トウゾクカモメ、シロハラトウゾクカモメ、クロトウゾクカモメ、オオトウゾクカモメで、ヨーロッパではJaegers(ドイツ語で狩人を意味するイェーガー)と言う名で知られている仲間です。ツンドラに巣をつくり、人間や他の侵入者に対して激しく自分の巣を護ります。タビネズミ、鳥の卵、小型の鳥や雛、そして死肉などなんでも食べます。クロトウゾクカモメはキョクアジサシを空中で追い回して口の餌を落とさせることもします。
少し小型のシロハラトウゾクカモメはある程度空中で昆虫も捕えます。
高緯度北極の2種類の猛禽類も忘れてはなりません。堂々としたシロハヤブサは場所によって3種の色合いがあります:西カナダの黒、グリーンランドの白、その中間の灰色です。
主にタビネズミとユキウサギを捕食しますが浜辺の鳥、ライチョウ、カモ類なども食べます。大きな海鳥の繁殖地の近くに巣をつくって、ハシブトウミガラス、ヒメウミスズメ、ミツユビカモメなどを捕食するものもいます。
シロフクロウはツンドラの昼行性猛禽類でタビネズミ、ユキウサギ、魚そしてライチョウなどを捕食します。
この素晴らしいシロフクロウが時として南に移動するのは、周期的な伝染病でタビネズミの数が激減する事に寄るという事は間違いないようです。
大きな黄色い眼と濃い色の斑点の入った白い羽毛で、シロフクロウは荒野に大きな存在感があります。
チドリ、シギ、ヒレアシシギなどの海辺の鳥は夏の昆虫などの無脊椎動物やベリー類が豊富な時期に合わせて繁殖します。
巣立ちに続き長い渡りが始まります。なかには南米や広い南太平洋の島々まで、科学者も解明できていない正確さで飛行します。
カモ類、ガン類の多くはツンドラの何千もある淡水湖や池の周辺で繁殖します。
3種のケワタガモ(ホンケワタガモ、ケワタガモ、コケワタガモ)はより穏やかな海岸べりで繁殖します。
アラナミキンクロ、クロガモ、ビロードキンクロの黒色カモ3種やコオリガモ、ウミアイサはみな北極圏内で繁殖しますが冬にはもっと南の海に渡ります。
4種類のアビは湖や池で繁殖しますが、米語ではLoon、ヨーロッパではDiversと呼ばれています。
ハシグロアビ、ハシジロアビ、オオハム、アビなどで、これらの大型種は潜水と遊泳がうまく、魚類を捕食します。
脚は身体の最後部に付いていて上体を起こして立つことができないで、陸上では胸を突きだしてしゃにむに進みます。従って、常に極近くの水辺で巣を作りますが、水から飛び立つのに長い助走が必要です。冬はほとんど海水域にいます。
生息地が限られているので、高緯度北極では陸鳥はごく少ない種類しか見られません。最も多いのはツンドラに巣をつくり、主に夏は昆虫、その他の時期は種類を食べるユキホオジロです。
冬には群れで南の北米の砂浜で雑草の種を拾う姿が見られます。もう一つの良く見られる陸鳥はツメナガホオジロで、雄の頭から喉にかけての黒い羽と夏には首後ろが茶色となるのが特徴です。
コベニヒワははるか南の森林境界線付近で繁殖します。小型の薄い体色に縞模様があって、頭と嘴下が赤いのが特徴です。
(北極旅行&北極クルーズ6-3)