南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

  • ホ-ム > 
  • 南極クルーズ・北極クルーズの手引き

南極クルーズ・北極クルーズの手引き

北極ワイルドライフ入門

デニス・プレストン 
一見したところ、北極の景観は荒涼としていて生物が住んでいるとは思えません。概して植生は高さ数センチ止まりで分布密度も低く、「不毛の地」という言葉がふさわしいように見えます。ところが、この植生には驚くべき多様性と豊かさがあります。樹木(もっとも上に伸びるのではなく地を這うように育ちます)、地衣類、コケ類、草、さらに顕花植物までが小さいながらも健気に、自分たちが生きるための条件がほんの少しだけ良い地面を覆っています。
北極の植物の存在そのものが植物にとって極地での成功を意味しているという事です。厳しい条件(浅くやせた土壌、極めて強い風、低い土壌温度、凍結と解凍を繰り返す頻繁な気候変動等々)を克服し、環境に適応してきたことはそれだけで称賛に値します。

北極海はほとんどの時間万年氷となっている部分が少なくなく、動物が大きな群れで生息できそうには見えません。
しかし、にもかかわらず、南極海域では温和な熱帯地方の海をはるかにしのぐ規模の生物が生息しています。海水の温度は低いほど多く酸素や二酸化炭素のような溶解ガスを含む事が出来ると言う物理的法則があります。
周囲の陸塊から流れ出る河川の水が運んだケイ酸塩、硝酸塩、リン酸塩、などの養分は光合成により酸素と結合して珪藻(けいそう) や他の単細胞植物となり、これが海洋食物連鎖の基底になります。
これらの有機体は夏の終りには驚異的な速度で繁殖します。
北極海がどれほど豊かであるのかを理解するには、船が流氷を押しのけて通る際に浮氷がひっくり返るのを見ればわかります。
浮氷の下側はおびただしい数の顕微鏡サイズの珪藻などの藻類で茶色がかった黄色に変色しています。これらが次々に動物性プランクトンおよびエビに似たオキアミ、イカなどの多種にわたる小型海洋生物のエサとなります。冷たい海流と暖かい海流が混ざり合う北極海には世界有数の好漁場があります。

このように北極では陸上動物も海上動物も、直接又は食物連鎖を通して手に入る植物に頼って生きながらえるよう適応しています。
昆虫、陸・海鳥、魚類、海生無脊椎動物、陸・海生哺乳類が生息していますが、自然環境の歴史が比較的浅いため、動物達が広大な地域を群生地にして全く新しい環境に適応するのにわずか1万年しか時間が無かったのです。
さらに生息地の選択肢が限られているため種類は限定されています。

(北極旅行&北極クルーズ6-2)