気候
端的に言って、地球の両極地は太陽から受けるエネルギーが少ないので他の地方より気候が寒冷です。太陽光線が地球に届く際の角度によって届く熱の強さも決まりますが、南北両極点では太陽光線は斜めから当たって接線方向に跳ね返り、かつ極点を覆う氷が鏡の役目を果たして太陽エネルギーの大部分を反射してしまうため、寒さがいっそう増幅されます。
北極生態系の重要な一面は、この地域の生物相が比較的若い事です。
陸地は更新世の氷床が後退したことにより極最近になって露出したものです。
したがって、グリーンランドの一部やカナダ北極東部はたいした生物学的進化を経験する時間がありませんでした。
北極を特徴づけるもう一つの注目すべき要素は季節の周期により気候が極端に変動する事です。冬は8~9ヶ月におよび、気温は氷点以上にならない事もあります。
その間、太陽はたいてい地平線の下にあります。
春が来ると北極の空は明るい青になって特徴である巻雲(けんうん) が現れます。
夏までには空は濃い青色になって巻雲が層雲 に変わります。
年中いつでも雨あるいは雪が降る可能性があります。
単純な気候区分によって北極の天候を説明するのは容易ではありません。
たとえば、北極地方を最暖月の平均気温が0℃を超えない氷雪気候帯と、+10℃を超えるツンドラ気候帯に分ける事は地形による差異を考慮していません。
さらに、この方法は内陸と沿岸地帯の違いも反映していません。
シベリアの北方境界線、北アラスカとカナダ北極などは大陸性気候(低温、最少降雪量、乾燥)を示していますが、一方ではヤンマイエンとスヴァールバルなどでは明らかに海洋性気候です。
夏の気候は北極全域にわたって驚くほど均一です。定義上の北極の南端と北へ延々と続く流氷原の最暖月の平均気温差はわずか10℃です。
しかし、最寒月の平均気温差は30℃にもなることがあります。
北極での最低気温記録は、-70℃です。
北緯60度付近の冬の沿岸地域各地は暖流と寒流の流れによりかなり大きい気温差があります。1月の平均気温もベルゲン(ノルウェー)では+2℃ですがチャーチル(カナダ)では-28℃です。この事は北大西洋海流 により熱が北極海域に運ばれている一方、寒流が東グリーンランドとラブラドールに沿って南下している事を示しています。さらに、ベルゲンとチャーチルの冬の平均気温差の方がベルゲンとアカプルコとの気温差よりも大きいという極端な例にはもっと驚かされます。
風も極めて重要な要素です。最大の危険要素(特に人間にとって)は周囲の大気の温度ではなく、風の冷却効果です。
例えば、気温が-12℃でも風が時速40㌔(秒速11.1㍍)で吹いていると-35℃の体感温度となり、露出している皮膚はみな1分以内に凍ってしまいます。
ですから、冷たい風が人間の安全にとって最大の脅威となり得るのです。
風はまた、雪、さらに植物群落を運ぶ役割も果たしています。
ツンドラ気候は緯度が高くなるにつれ(降雨量と言う点で)砂漠の様相を呈して来ます。これは、低い気温で大気中の含水量が減り、降水量も減るからです。
一方、気温が低くなると大気中に含められる水分が減り、結果として極地砂漠と言われるなかでも高湿度と部分的な湿地が出来ます。
風が雪を運ぶ要素もある程度働きますが、極地砂漠の降雨量はわずかです。
(北極旅行&北極クルーズ5-2)