衣服
衣服の細部はイヌイット内の部族ごとに異なっていました。衣服は出身地を見分ける方法の一つでした。地域的な違いは形だけでなく使ってある材料、染料そして縫製技術などからもはっきり分かりました。
手に入る毛皮の種類や着る人の生活様式により、どんな衣服にどんな毛皮を使うかを決めました。
例えば、アザラシの腸は最も防水力があるのでカヤック用装備に使われました。
グリーンランドのメルヴィル湾のイヌイットは強さと耐久性からホッキョクグマの毛皮でズボンを造りました。
バフィン島では今でも、カリブーとアザラシの皮で出来た服が狩猟用には最良だと言われています。
軽くて防風・防水が必要な衣類にはワモンアザラシの毛皮を使いました。
優れた保温性のカリブーの毛皮は最も一般的な衣服用材料です。
カリブーの毛皮が手に入らない時にはリス、鳥そして犬などの他の動物も使われました。ホッキョクキツネの毛皮は保温効果と柔軟性が必要な時に使われました。
ヴァイキングのカフタンがバフィン地方の伝統的男性用パルカの形に影響を与えたようです。アマウティ(Amauti)は女性用パルカです。
イヌイットの他の衣類同様、衣服には実用的意義と精神的意味も込められています。
この非常に子供中心の社会を象徴するように、伝統的なアマウティは大きなフード兼袋が付いていて、キツネの帽子と裸のままの赤ん坊を入れて出歩きました。
フード内には再使用できるカリブーの皮かコケのオムツも入っています。
女性がアマウティを着るのを拒むという事は出産という伝統的な女性の役割を拒否する事と解釈されました。
伝統的な履物はたいていアザラシの皮で作られた「カミック(Kamik)」で、ラシャ製裏地が付いていました。
普通イッカクの腱で出来た糸で縫合してあるので、濡れると糸が膨張して針孔をふさいでしまう優れものでした。
今日ではより品質の良いデンタルフロスや合成糸を使うのが一般的です。
イヌイットのミット(指の出た長手袋)は社会的あるいは仕事上の役割に応じて作られました(特にランキン入り江付近では顕著)。
女性用ミットは、品の良い白い縞模様があるのでカリブーの前足の皮で作られましたが、男性用はより暖かい厚めの毛皮の毛を短くある後ろ足の皮で作られており、イグルー建設や狩猟がしやすいように指先部分が短く切りそろえてありました。
子供用のミットはカリブーの子供のふわふわした前足の毛皮を使いました。
(北極旅行&北極クルーズ4-13)