輸送手段
カヤック(Kayak)は狩猟に使う主な輸送手段でした。
この軽くて細いボートは人間一人を乗せて水を切って音を立てずに進みます。
大体の大きさは長さ4~7㍍で簡単に持ち運びができました。動物のあばら骨や流木をカリブーの腱の綱でつなぎ合わせた枠にセイウチかオットセイの皮をかぶせました。女達は皮を枠に広げて伸ばしてから服などに縫い上げました。
なめした動物の胃袋製の防水ケープを羽織った狩人は中央部に座り、槍は牙や取っ手に着けた皮ひもでカヤックに繋げてありました。
さらに大きなボートが必要な時は、イヌイットは「ウミアック(Umiak)」を使いました。ウミアックは長さ9~12㍍の甲板無しのボートです。
家族全員と家財道具一式を運ぶことができ、捕鯨にも不可欠でした。カヤックと同じような材料でできており、時にはアザラシの腸で出来た帆を付けました。
冬の旅は犬ゾリ(カマティックKamatik)を使いました。ソリは使用目的によって長さ4.5~9㍍で、2枚の滑走部分は前が幅広で後ろが狭くなっていて、横木で繋がれています。全てはカリブーの腱で作った綱で縛り付けてあったので、デコボコの表面でも多少は持ちこたえられました。
滑走部分と横木には木、牙、骨、クジラヒゲ、時には凍結した皮などが使われました。荷を積んだソリはアザラシかカリブーの皮で作ったひもを使って引き具を付けた6~12匹の犬で引きました。
最も強い犬を先頭に配して特に悪天候の際には犬がとがった氷で足の裏を痛めないように、女たちが作った小さなブーツを履かせました。カナダ北極東部とグリーンランド全域では犬は扇形に配置され、その他の地方とアラスカでは縦に配置されました。
(北極旅行&北極クルーズ4-12)