南極・北極旅行&クルーズ 株式会社クルーズライフ

みんなの探検旅行~ブログ~
2019.08.15

【スタッフレポート】スピッツベルゲン島クルーズの6月と7月の比較

クルーズライフの「日本人通訳兼ナチュラリストガイド」として乗船した保阪瑠璃子さんより2019年6月と7月のスピッツベルゲンクルーズの比較レポートをご紹介します。

 


2019年はスピッツベルゲンの6月初旬と7月中旬のクルーズに乗船しましたので、時期的違いについてお話してみたいと思います。

 

まずスヴァールバル諸島と海の関係です。島の気候は周りの海の影響を大きく受けます。上の図はメキシコ湾流の分流である暖流(赤)と、北極海からの流れである寒流(青)を表しています。

濃い青色をしているスピッツベルゲン島西岸沖の海域は深く北極海からの海水の主な出口となっています。沖を流れる暖流のためスピッツベルゲン島西岸は東岸より暖かいですが、春になると寒流も流氷を乗せて島の南を回り込んで海岸沿いに北上していることが分かります。

 

今回6月初旬に上空から、流氷が北上している様子が良く見えました。

もちろん海氷の状況は年毎に異なります。例えば、今年の冬は北極海の海氷状況が例年になく厳しく、春になって北極海から流れ出た流氷群(多年氷や2年氷)が7月下旬までヒンローペン海峡の中ほどに詰まっていたため、昨年6月下旬に可能だったスピッツベルゲン島一周が、同じアイスクラス1Aの船でも7月20日過ぎまでできませんでした。6月便ではスピッツベルゲン島北岸にさえ出られなかったのです。しかし、海氷が多いという事はそれを足場にして狩りをするホッキョクグマに遭遇する可能性が高いという利点にもなります。

さらに、雄のセイウチの群れがいる砂浜より、比較的安全な流氷群の中にいる5月頃に出産し授乳中の雌のセイウチの群れが見られるチャンスも高いのです。

 

 

ロングイヤービーエンの気温を見る通り7~8月が夏ですが、極地では8月中旬には秋風が立ち始め、冬の気配を感じます。

今年の6月便では毎日2~3℃程度だった北岸近くの気温が7月便では7~9℃に上昇しました。全ての動植物は8月上旬までの約6週間の間に1年分の生育をしなければならないのです。ですから、ここで繁殖する鳥たちの子育ての繁忙期は7月です。まだ湾内の海面が凍っている4~5月頃にやって来て氷が割れるのを待ちながら婚活や巣作りに精を出す鳥たちもいます。6月便の際は多くの鳥がまだ抱卵中でしたが、7月にはシロカモメやホンケワタガモの雛を親鳥の近くで見る事が出来ました。

南極・北極を往復することで知られるキョクアジサシの若鳥に「南極でまた会おうね」と呼びかけました。

ホッキョクグマは真夏に海氷が流れ出てしまう前に出来るだけアザラシをとらえて脂肪をつけなければなりません。

鳥崖の下の斜面では落ちてくる卵や油断している鳥を求めて歩き回るホッキョクキツネが見られます。

 

       

 

植物は冬の間、細胞内の水分を極力少なくした仮死状態で生き延び、永久凍土帯の表面数十㎝の氷や雪が融けると活動を始めます。断崖の鳥崖から流れてくる鳥の糞交じりの栄養豊かな雪解け水が潤沢に得られる斜面やツンドラでは苔や草が青々と生え、ガン類の草食動物にエサと巣の場所を供給します。

5月下旬ごろからツンドラの花も順々に咲き始めます。比較的暖かい南部のホルンスンやベルスンのフィヨルド内各湾では、永久凍土の氷が融けた水を吸ってフワフワの絨毯状になったツンドラに、赤紫のムラサキユキノシタが最初に咲き始めます。同じユキノシタ属のキバナクモマグサ、チャボクモマグサなどがそれに続きます。

トナカイの好きなジンショウスイバもそれに続きます。しかしお花畑と言えるほどの種類と量になるのは何といっても7月中旬です。数年前の6月には何もないと思って通り過ぎたリーフデフィヨルドにあるテキサスバー小屋背後の斜面が、今年の7月便では驚くほど多彩なお花畑に変わっていました。チョウノスケソウ、コケマンテマ、シオカマギク、オニイワヒゲ、スヴァールバルヒナゲシ、ムカゴトラノオ、ミミナグサ、トモシリソウ、タカネキンポウゲなどが青空と白い氷河に鮮やかに映えてとても美しかったです。ツンドラの花シーズンはワタスゲの毛を付けた種が飛び散る8月中旬頃まででしょう。

 

        

 

今年のヨーロッパは何度か熱波に襲われていますが、スヴァールバルもその余波を受けて7月には最高気温が15℃位まで上がったこともあるようです。シベリアと北極海の厳しい冬の後に熱波が襲ったため、今年の7月便は流氷が多い利点と気温が急上昇した利点の両方の恩恵を受けたと言えるかもしれません。シロナガスクジラやミンククジラはほぼ毎年みられるようになり、シャチも見られるようになったのは温暖化の影響でしょうか。これらの情報がご自分の出発便をお選びいただく際の参考になれば幸いです。

南極・北極旅行&クルーズについて
お気軽にお問い合わせください
お電話でのお問い合わせ03-6228-3981平日9:30~18:30(土日祝休)メールでのお問い合わせパンフレット請求
クルーズライフについて
株式会社クルーズライフは、南極・北極旅行&クルーズの専門店です。二十数年の豊かな経験を持つスタッフが日本のお客様に極地への旅をお届けいたします。
南極旅行・北極旅行&クルーズの手配は、極地旅行(南極・北極)の専門店、株式会社クルーズライフへ。
観光庁長官登録旅行業第2054号/一般社団法人日本旅行業協会(JATA)正会員
クルーズライフの詳細はこちらクルーズライフFacebookページ