- スタッフレポート
【スタッフレポート】南極旅行をさらに楽しむために(日本人通訳:保阪瑠璃子)
クルーズライフの「日本人通訳兼ナチュラリストガイド」として乗船した保阪瑠璃子さんの旅行のレポートを毎回ご紹介していますが、今回は南極旅行の楽しみ方をご紹介します。ぜひご参考ください!
2月10日~19日のオーシャンエンデバー号南極半島エクスペディションに同行しました。
今回は日記的な記述に替えて下記の点について記したいと思います。
1)クルーズライフから送られる「南極の手引き」を読むことの大切さ。
2)季節、天候、便により上陸・遊覧クルーズの場所が異なる事。
3)私の船酔い対策
1)クルーズライフから送られる「南極の手引き」を読むことの大切さ。
南極旅行に参加するお客様はかかった費用に相応又はそれ以上に収穫の多い旅になることを望んでいることと思います。
その為に何をしたら良いかは様々な意見があるでしょう。
頭に浮かんだちょっとした疑問をインターネット等で探す過程で、そうだったのか!と思いがけなく別の情報も得ることができた方も多いことと思います。
私は最近「情報があると今まで見過ごしてしまった事も見えてくるものだ」とつくづく思います。
特に南極のように、ガイドブック等からの情報源が非常に少ない旅行先では、予備知識が有ると無いとでは同じ場所に行っても見える物差しに大きな違いがあるように感じます。
「ああ、鳥が飛んでいる」と思うのと、
「あっ、あれは今年巣立ったナンキョクアジサシに違いない。隣を飛んでいる親鳥と羽色が違う」と思うのとの差です。
そして「ペンギンはどれもかわいい!!」と思うだけで終わってしまうのと、
「午前中に上陸した島のゼンツーペンギンの雛と午後の島の同種の雛と大きさが異なるのは巣作り開始時期の差に違いない、なぜだろう?」と一歩踏み込んでみるのとの差です。
そのもう一歩先へ踏み出すための手助けとなるのがクルーズライフから送られる
「南極の手引き」です。
「南極の手引き」はクォーク社作成の英文「Antarctic Reader」の翻訳版ですが、分野別に何冊もの参考書を読む替わりにこれ1冊でよくまとめられていると思います。
できれば出発1か月前位にご一読いただき、旅行中には、その日に見た動物の項目や南極講座の関連項目を拾い読みすることをお勧めします。
そして、さらに帰国便の機内でもう一度ざっと読み返していただくと実物を見た後なので「あの時見たあれはこういう事だったのだ」というふうにより深い理解が得られるはずです。
2)季節、天候、便により上陸・遊覧クルーズの場所が異なる
一般的に南極観光シーズンは11月~3月上旬と言われていますが、毎年その通りとは限りません。
さらにその期間内でいつでも同じワイルドライフ(野生生物)の状態が見られるわけでもありません。南極は歴史的な遺跡や建築物観光とは違い、厳しい自然環境の下で観光が行われるのです。
良きにつけ、悪しきにつけ同じ天候が半日と続かないと言われる南極半島部分を訪れます。今季(2018~19年シーズン)は比較的早く始まり、早く終わりつつあるように感じます。
さらにシーズン中でも時期や訪問する島によって動物の繁殖状態が異なります。
通常私たちが南極半島に着くころには代表的な3種類のペンギンが既に繁殖活動を行っていますが、繁殖のために南極半島に戻ってくるペンギンは、
・アデリーペンギン(9月下旬)
・ヒゲペンギン(10月20日前後)
・ゼンツーペンギン(10月下旬)と少しずつ異なります。
それも、その年の積雪や天候により2週間くらいずれることも多々あります。
今年は雪融けが遅く初夏(10~11月)にも積雪があったので、雪融けの遅い場所であるダンコ島やミケルソン・ハーバーなどの低地部分では、11月末にもかかわらず50cm程度の雪が融けるのを待ちながら婚活中のゼンツーペンギンが多く見られました。
繁殖開始が遅れた後発組ゼンツーペンギンの小さな雛は2月中旬にはまだ親鳥の足元に居ました。他の島で走り回っている雛とは成長段階が大きく違っているのです。
ペンギン3種の中でもコウテイペンギンと共に南極大陸周辺でしか繁殖しないアデリーペンギンは、短い夏に短期間で子育てをしなければならないので、ゼンツーペンギンの約半分の55日前後の育雛期間で巣立ちしてしまいます。
ですから、2月中旬以降の南極半島のアデリーペンギンのコロニーでは子育てが終わり換羽中の親鳥数羽しか残っていなかったり、誰もいなかったりする事もあります。
逆に2月は鯨類との接近遭遇の可能性がぐんと高くなる頃でもあります。
ゲーラーシェ海峡周辺のどの湾でもザトウクジラやミンククジラを見ることができるのは、ここ数年の嬉しい変化です。好奇心旺盛なミンククジラが背伸びをして上半身を水面上に出してすぐ近くのボート上にいる私たちを見つめたこともあります。
さらに、数頭のザトウクジラが連携してオキアミを捕るバブルネット漁法や、母系家族シャチの3~4家族が集まるスーパーポッドのお見合いパーティなどに遭遇する可能性も2月には増します。
エクスペディションリーダーと船長は皆さまに最大限お楽しみいただけるよう、上記のような変化の他、毎日の天気、風向きなどを考慮して上陸・遊覧クルーズの場所を決めます。
さらに、一か所に複数の客船が集まらない配慮も重要ですからA案、B案、C案といろいろな代案を持つ必要があるのです。
ですから、既に名が知られている場所の絵葉書写真の確認にこだわらずに、常に新しい上陸・遊覧地を見つける努力をしています。今回のパラヴァー・ポイントやスパート島などがその例でした。
尚、アドベンチャーオプションのスキー、登山、キャンプは雪融けが進む1月下旬以降は行いません。
3) 私の船酔い対策
私も30年ほど前に初めて南極に向かうドレーク海峡で船酔いになりました。
その後、身体が船の揺れに徐々に慣れてきたり、工夫をしたりして現在に至ります。
普段船酔いしない方でも睡眠不足などその時の体調により突然酔う事もあります。
ですから、私は普通の薬局で買える、眠くなりにくいタイプの酔い止め薬(Meclizine HCI 25mgと言う成分)を最初の日に必ず半錠だけ飲みます。
そして大丈夫そうだったらそれだけでやめます。1日一錠と言うタイプの薬ですが朝晩半錠づつに分けると全く眠くならず、なおかつ薬効も平均化されるように感じます。この薬は船医が無料配布するものと同じ成分です。
よく海外の方が耳の後ろに直径1cm位の丸いパッチを貼っていますが、これは処方箋が必要な強い薬です。
かつて私も試したことがありますが、強すぎて瞳孔が光に反応しなくなってしまい私には合いませんでした。
人それぞれ、体調や薬に対する反応は異なりますから一概に私の例をお勧めするわけにはいきませんが、参考になれば幸いです。