- スタッフレポート
スピッツベルゲン探検クルーズ
スタッフR投稿
6月19日 気温10℃
スバールバル諸島中最大の島スピッツベルゲン行きの便は、ノルウェー国内でありながらスバールバル条約の為往復、経由地であるトロムソで出入国・税関手続きが必要。
オスロから4時間ほどで着いたが、北緯78度を超えた高緯度北極圏にふさわしく立木が全く無く、遠くに見える雪をかぶった峰々の手前は荒涼とした極地砂漠とツンドラであった。
フリースジャケットの上にウィンドブレーカー位が丁度良い。
ホテルに向かう途中見えたホンケワタガモやユキホオジロが北極圏内にいる事を確認させてくれた。
6月20日 気温11℃
驚くほど快適なホテルで白夜の1泊を過ごした後、乗船時間まで1本しかない町の繁華街(?) を見て回った。
コーヒー1杯からクレジットカードが使え、博物館の売店で見つけた百万分の一の地図は後にクルーズ中とても重宝した。
午後4時、港からゾーディアックボートでシー・スピリット号に乗船。
指定の荷物タッグを付けてホテルに残した託送荷物は船室に届いていた。
夕食後パルカとブーツの支給があり、いよいよ10日間クルーズの始まりだ。
今回は船内放送はもちろんの事、全ての北極講座や催しものは同時通訳が付くのでとても安心だ。
6月21日 気温 9℃
南極クルーズと異なり、乗船翌日から船外活動が始まる忙しさだ。
環境にやさしい活動をするためのオリエンテーションを聞いた後、最南端にあるホルンスン・フィヨルドでのゾーディアック遊覧では仕留めたアザラシを食べるホッキョククマ2頭に出会う。
フィヨルド末端部には崩落したたくさんの氷が漂い、アゴヒゲアザラシもいた。
船長主催のウェルカムカクテルと夕食会。
5年ぶりに厳しい海氷の為、スピッツベルゲン島の北東部海域は耐氷船といえども侵入できず、スピッツベルゲン島の東岸海域にあるエッジ島やバレンツ島に向けて南から回り込むことになった。
6月22日 気温3℃
朝食前にホッキョククマ出現。
操舵室の高い位置から双眼鏡等で遠くのクマを見つけてから静かに近づくのが得策。
エッジ島北西部、旧セイウチ猟基地跡近くの砂浜ではセイウチの群れを観る。
1㌧もの巨体はやはり存在感がある。
黄色や紫のツンドラの花も咲き始めていた。
午後にはバレンツ島とエッジ島との間にあるフリーマン海峡でミツユビカモメの繁殖谷を観る。
丁度夏毛に半分なりかかっているホッキョクキツネが間近に現れて興奮。
夕方海氷上にセイウチの群れを多く見る。
夕食後ホッキョククマ入門の北極講座を聞く。
6月23日 気温5℃
午前中はノルドアウストランデット(北東島)のアウスト氷冠から幅約20㌔もの氷舌が海上にせり出している先端部分をゾディアック遊覧。見渡す限り続く氷舌の水面上30㍍もある先端は融解水が流れ出る滝や、洞穴状になっている部分など白一色でない氷河の圧倒的な景色だ。
午後はヒンローペン海峡の南の出口に浮かぶ小さなキーパート島を一周して色々な海鳥を観る。
毎日夕食前に行われる、今日のまとめと質疑応答そして明日の予定解説を聞く「リキャップとブリーフィング」は思いがけない情報が聞けるのでとても楽しみだ。
6月24日 気温2℃
北東島の南西部に突き出ているわずかな砂利海岸で40数頭のセイウチを見る。
音にとても敏感な動物なので、大声はもちろんの事、カメラや三脚の金属的な音も出さないように、50人ずつ静かに近づいた。長い牙をもった雄の成獣や短い牙の雌や若い雄も見分けられた。
午後はヒンローペン海峡をさらに北上してスピッツベルゲン側にある6万番と言われるハシブトウミガラスが集団営巣する断崖下をゾーディアックでじっくり遊覧観察。
上空高くには黒ゴマを撒いたように飛ぶ鳥の群れ、離陸しようと一生懸命水面を滑走しているもの、そしてシロカモメの犠牲になったもの、等々。
ボートのすぐ近くにいる鳥の眼もじっくり見る事が出来た。
この辺りが今年の流氷群の端となっているらしく、ちょっと北の水平線は白く見えた。
6月25日 気温5℃
朝食中にシロクマ発見の放送でレストランはしばし空になった。
その後北東島側の湾内に残る定着氷際をゾディアック遊覧でワモンアザラシを見る。
今年はまだ北東部からの海氷が大きく張り出しているので、北東島とスピッツベルゲン島との間にあるヒンローペン海峡は北に抜けられない。
今日の午後から明日午前にかけてスピッツベルゲン島の南を迂回して西側に出る事にした。
船内ではセイウチやアザラシに関する北極講座を聞いたり地球温暖化のDVDを見たりした。
6月26日 気温5℃
午前中の北極講座はシロクマ出現の放送で中断した。
視界が極端に悪い時はシロクマと鉢合わせの危険があるために上陸できない(南極と大きく違う)。
午後ホーンスン最奥部の氷河末端部をゾディアック遊覧する。
北極のアイドル、ゾウゲカモメと無数のミツユビカモメがプランクトンを食べていた。
6月27日 気温4℃
またまた朝食中にシロクマ2頭の呼出し放送。
9:30ついに本クルーズ最北到達地点の北緯80度に至る。
すぐ前には大きな氷板の流氷群が迫っている。
シャンペンで乾杯の後、水温2℃の海中に北極飛び込み大会!
約30名が飛び込んで認定書をもらった。
午後と夕方、スメーレンフィヨルドとフールフィヨルドの遊覧中シロクマが次々と出現!
ニシツノメドリやゼニガタアザラシも見られた。
6月28日 気温7℃
午前はキングスフィヨルドにある小さな島で1時間半ほどの気持ちの良いツンドラハイキングを楽しんだ。
3段階の難易度に分かれたハイキングの内、船内の運動不足を解消したい方には健脚コースを、写真好きには中程度のハイキングをお奨めする。
対岸はアムンセンが飛行船で北極点探検(1926)に出発した場所で、その後石炭採掘が大事故の起きる1962年まで続いたが、今やオーロラ観測や地球環境の変遷をモニターする国際観測村に様変わりしたニーオルスン。
午後は7月14日氷河前の岩場をゾディアック遊覧し、ニシツノメドリ、シロカモメ、ハジロウミバトなどの子育て風景を観察した。
夕食はクロスフィヨルド内を静かにクルーズしながら北極バーベキューを楽しんだ。
最も奇想天外な帽子をかぶった人には賞品が出たようだ。
6月29日 気温6℃
今日はクルーズ最後の日。
ベルスンフィヨルド内のキャンプミラーでトナカイ、カオジロガン、ミツユビカモメなどの他、鳥の崖下で卵や雛を狙う4匹ものホッキョクキツネが見られた。
顔面だけが夏毛の茶色でその他はまだ真っ白のキツネや、すっかり夏毛になってガンの卵を口にくわえて巣穴に運ぶキツネなど面白かった。
夕方ベルスンフィヨルド入り口近くを航行中なんと最大のクジラ、シロナガスクジラが2頭も船の極近くに現れて、しばし船の周りに留まってくれたのだ!
灰色をした長い背中をたどって小さな背びれが見えると静かに潜っていった。
こんなに近くでシロナガスクジラを見たのは初めてだ。
本クルーズのフィナーレにふさわしい素晴らしい出来事だった。
最後のリキャップは下船時にもらえるDVDに入るスライドショーの試写会。
そしてさよならカクテルと夕食会。夕食後もしばらくバーで話に花が咲いた。
6月30日 気温9℃
9:00 ロングイヤービーエンに戻った朝、素晴らしかったクルーズを終えて名残惜しいシー・スピリット号を下船。
午後のオスロ行き便のチェックインまでしばし町で自由行動。
集合時間に合わせて町の駐車場から混載バスで空港へ。
毎日忙しいほどの船外活動で予想外の場所に行けたり、シロナガスクジラを初めて見られたりなど、南極半島クルーズに比べても決して勝るとも劣らない素晴らしいクルーズであった。