※このページはヘリテージ社(Heritage Expeditions)の資料より日本語に訳して公開しています。

 

ウランゲリ島

WRANGEL ISLAND

 

 

 

概要(OVERVIEW)

荒涼とした遠隔地の1つで地球の頂点の近くに、野生的で未開の重要な保護された2つの島があります。

最後の氷河時代に氷河に触れられず、マンモスが地球を歩いていた更新世時代のようにロシアのウランゲリ島とヘラルド島は、極地の生物多様性をもつ保護地です。

ウランゲリ島・ベーリング地峡保護プログラム2001

 

 

地理(GEOGRAPHY)

●地理情報(Geographical Information)

ウランゲリ島は東シベリアとチュクチ海のシベリア沿岸の北東沖140kmにあります。無人ではるかに小さなヘラルド島はベーリング海峡とアラスカに向かってウランゲリ島の北東64kmに位置しています。ウランゲリ島は経度180度にまたがっていて、西半球と東半球の両方に位置しています。

 

 

地域(Area)

ウランゲリ島は長さ150km、幅126km、総面積7,609km²の大きな島です。小さなヘラルド島は、総面積が11.3km²です。

 

最高高度(Max Altitude)

ウランゲリ島の最高峰はソヴィエツカヤ山で、標高1,095mです。ヘラルド島の最高標高地点は343mです。

 

地形的特性(Physical Features)

島の中央や南のエリアは東から西に横断する2つ侵食した山で成り立っています。南は最高峰のソヴィエツカヤ山で、中央の山々の中には比較的暖かく保護された渓谷があります。

山の多い険しい地帯や高原地域があります。島の北半分は、もっと平らで、たくさんの湖や川が点在する低い平原です。山の南にはツンドラで覆われた平原があります。ウランゲリ島とヘラルド島は12海里(22.22km)の厳しく保護された海域に囲まれています。24海里(44.45km)以上もの緩衝地帯によりさらに保護されています。

 

 

動植物

植物相と植生(Flora and Vegetation)

ウランゲリ島の珍しい歴史と隔絶、気候、地質学は、マンモス・ステップ植物複合体の名残です。

島の400の植物種や亜種は、高緯度の草、地衣類、乾燥した草状の苔、潅木など植物相の豊かさを表しています。また時折、低木、広葉草本などが島の下方から中央の山の斜面に生息し、sedge bog 、ミズゴケ、ワタスゲ、ヤナギなども生息しています。島の中央の広い暖かな地域には苔、草、低木、ツンドラなど亜北極の植物の群生が占めています。

他の自然界には高山地方の極砂漠や高緯度北極ミネラル湿地、極地牧草地が広がっています。極地の珍しい固有種の動植物保護のリストに挙がっている24種類の維管束植物はとても貴重です。

 

 

鳥類ハイライト(Birding Highlights)

ウランゲリ島とヘラルド島は繁殖地を求めてベーリング地峡を通り、北に飛ぶ回遊性渡り鳥の最後の経由地です。鳥類相はすべての北極圏の鳥のコミュニティーの典型で、その中で浜辺の鳥や水鳥がスズメ目の鳥と比べて高い割合で生息しています。

50種が定期的に島で巣を作り、110種は時々島にやってきます。

 

水鳥

ハクガンは最も特記すべき鳥です。数は変動し、かつては全滅の危機にありましたが地球の温暖化に後押しされ、現在では6万番(つがい)が島で繁殖しています。太平洋ブラック・コクガン(Pacific Black Brant Geese)がここに巣を作っていますが、あまり数はいません。ホンケワタガモが単独で内陸に営巣地を作り、ケワタガモは低地の沼に巣を作ってたくさん生息しています。

 

海辺の鳥

極地のツンドラでは一般的に海岸に生息する鳥が一般的です。ダイゼン、キョウジョシギ、コオバシギなど36種は、最も一般的に広がり記録されています。

ハマシギ、アメリカウズラシギがよく生息していますが、湿気の多い湿地帯を生息地に好みます。一方、アジアのムナグロは温かいくぼみを探します。ハイイロヒレアシシギはウランゲリ島のたいていの湿地で見られます。ヒメウズラシギやコモンシギは保護地の中でも珍しい鳥です。

 

海鳥

チュクチ海にあるいくつかの海鳥の大きなコロニーはウランゲリ島とヘラルド島は、東と西海岸に沿った所にあります。すべての営巣地にはミツユビカモメ、ハシブトウミガラス、ハジロウミバト、ヒメウが混在して繁殖しています。

種の構成や割合はコロニーのある崖を形成する岩の構造によります。

少数のツノメドリ、エトピリカ、ヒメウが領域の北限に生息し、キョクアジサシもいます。ミツユビカモメに加え、シロカモメ、ゾウゲカモメ、ヒメクビワカモメ、クビワカモメなど他の4種類のカモメも一般的です。

 

猛禽

時々、ウランゲリ島とヘラルド島の海鳥のコロニーの近くにシロハヤブサが巣を作ります。ごくまれに北極ハヤブサやケアシノスリが島々に飛来します。ウランゲリ島の主要な捕食性の鳥はシロフクロウです。3種類のトウゾクカモメ科の鳥が島に生息し、トウゾクカモメとシロハラトウゾクカモメは寄生性の巣を作る最も一般的な鳥です。

 

鳴き鳥

52種のスズメ目の鳥がウランゲリ島で特定されていますが、ツメナガホオジロ、ユキホオジロ、コベニヒワの3種類のみがよく見られます。

 

哺乳類

ウランゲリ島の陸の哺乳類は8種類のみです。そのうち5種類は固有種で、トナカイとジャコウウシの2種類は連れてこられました。10種類の海生哺乳類は島の海岸水域に生息しています。

 

ホッキョクグマ

ウランゲリ島はホッキョクグマの生息地で有名です。ウランゲリ島はホッキョクグマの出産地と言われています。毎年平均で300~350の出産用巣穴があり、ヘラルド島では最もその密度が高くなっています。

 

セイウチ

ウランゲリ島はタイヘイヨウセイウチの重要な場所の1つです。ほとんどの成熟したオスはベーリング海峡に滞在し、メスや未成熟の大多数は7月中旬までにウランゲリ島とヘラルド島近くの浅瀬で採餌します。

 

レミング(ネズミ)

カラードレミング(Collared Lemming)とシベリアレミングは保護区にもともと生息しています。カラードレミングは固有種として認定されていて、極地の他の動物とかけ離れています。シベリアレミングは固有亜種です。レミングはシロフクロウ、トウゾクカモメ、ホッキョクキツネの主なエサとなっているため、島の食物連鎖の非常に重要な構成要素で、レミングの数により捕食者の数が増減します。

 

ホッキョクキツネ

ホッキョクキツネはたくさんの餌に恵まれ、良い巣穴があり、自然保護区で罠を仕掛ける事も出来ないため、ウランゲリ島にたくさん生息しています。

 

クズリ

1970年代後半に、この地に歩いてやってきました。トナカイを狩猟したり、ガチョウを餌にしたりしています。

 

オオカミとアカギツネは氷海を渡って島にやってきたことで知られています。オオカミが2000年頃にやってきて、トナカイは1948年~1952年に島に牧畜目的で導入されました。現在のトナカイの数は約1,500頭で、ピーク時には今の約4倍の6,000頭以上いました。

ジャコウウシは1975年にアラスカのヌニバク島から島に導入され、数は増え、現在では約600頭生息しています。