クォーク・エクスペディションズ社 2018年 北極
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神秘的な夜空の芸術オーロラ オーロラは、南極や北極域の遥か上空で発光する自然現象であり、その源は太陽にあります。太陽からは、「太陽風」と呼ばれるガスが放出されています。このガスはプラズマと呼ばれ、負または正の電気をもつ電子や陽子(水素イオン)などからなっています。太陽風が地球に到達すると、地球の磁場の影響を受けて地球磁気圏の内に取り込まれ、太陽と反対方向の夜側に蓄積されます。蓄積量が多くなると両極域へと運ばれてゆきます。運ばれる途中で加速されて高速になった電子は、「オーロラ電子」と呼ばれ、磁力線に巻き付きながら地球の超高層大気の上層(電離圏)に向かって飛び込んできます。このオーロラ電子は地球の大気に衝突し、100kmから500kmの高度で遮られてしまいます。この際の衝突により、オーロラ電子が持っていた運動エネルギーが大気に与えられます。 その結果、衝突を受けた大気中の酸素原子や窒素分子は、「励起状態」と呼ばれるエネルギーが過剰な状態になってしまいます。励起状態は不安定な状態であるので、すぐに、元の安定なエネルギーの低い状態(基底状態)に戻ろうとします。戻る際に、過剰のエネルギーを光として放出します。この光がオーロラなのです。 オーロラがカーテンのような筋状に見えるのは、オーロラ電子が磁力線に沿って動き、その途中で大気と衝突して少しずつエネルギーを失い、大気を光らせるためです。オーロラとなって光るカーテンは、地球の磁力線が夜空に浮かび出たものといえます。 オーロラは、極地域でよく見られることから「極光」とも呼ばれます。北極地域で見られるオーロラを「北極光」、南極地域で見られるオーロラを「南極光」と区別して呼ぶこともあります。 (図1、図2参照) オーロラの出現頻度が高い領域は「オーロラ帯」と呼ばれています。北半球はアラスカからカナダ、グリーンランド南端、アイスランド、そしてスカンジナビア半島の北端を通る地域です。その地に行けば、星空が見える天気の良い夜にはオーロラを見ることができる可能性が大きいです。南半球では昭和基地がオーロラ帯の真下に位置しています。 「オーロラ帯」とは、“オーロラが統計的に出現しやすい磁気緯度の地帯”、を意味し、地球上に固定された地域です。一方、「オーロラオーバル」と呼ばれる領域もあり、それは、宇宙から地球を眺めたとき、“その瞬間瞬間にオーロラが現れている場所”、を意味しています。「オーロラオーバル」は「オーロラ帯」とは異なるものです。「オーロラオーバル」の形と位置は太陽風と地球磁気圏との相互作用により、時々刻々変化しています。オーロラ活動が活発な時には、低緯度まで広がり、幅も太くなります。一方、活動が弱いときには極方向に縮まり幅も狭くなります。極域の高緯度に行けば行くほどオーロラが見えやすいと思われがちでありますが、オーロラオーバルは磁気緯度の60°~80°付近に現れるために、それ以上の高緯度側ではオーロラが見える確率は極めて低くなります。 (図3参照) オーロラの光の色は、主に、赤、緑、青、ピンク色です。オーロラのカーテンの上の部分では赤、下の部分では緑になります。より激しいオーロラが出た場合には、カーテンの下の端が青やピンク色に輝きます。 オーロラの色は、オーロラ電子が衝突する大気と関係しています。オーロラ電子が大気の酸素と衝突した場合には赤や緑の色が発光し、窒素と衝突した場合には青やピンク色が発光します。 さらに、オーロラ電子のエネルギーにも関係しています。エネルギーが低いと赤であり、高くなるにつれ、緑、青、ピンク色となります。実際のオーロラは、様々なエネルギーの電子により、いろいろな高度で起こっていることから、その色合いは多種多様です。 (図4参照)オーロラの色オーロラが良く見える地域(南極と北極のオーロラ帯)文責 : 国立極地研究所名誉教授 佐藤夏雄図1/オーロラの源は太陽であり、そのエネルギーは地球まで太陽風で運ばれてくる。 図2/オーロラが発光するメカニズムを示した模式図図3/北半球のオーロラ帯の位置北極オーロラの発生する仕組み図4/様々な色をしたオーロラの例。緑色をしたオーロラが最も多く発生する。真っ赤なオーロラは太陽活動が高い時期に現れる。5
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